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serial experiments lain 20th Anniversary Blog

Layer:11 Infornography - Rock Bottom

ここからB-Part。 岩倉家―― 玲音は「ぐるぐる」状態で凄まじい仕事量をワイヤードで実行しているのだが、肉体は抜け殻の様にただ苦しみに堪えおり、ポンプの動作音だけが聞こえる静寂の中。 疲弊し、躯を傾がせていく。 横になった玲音の前に、英利が声を掛…

Layer:11 Infornography - No line.

11話A-Partの総集編、シナリオにある通り私の抱いた野心は「台詞が一切無い」表現だったのだが、台詞の抜粋も必然的に幾つかは用いられ、私の野心は潰えてしまった。 「台詞の無い」=映像だけで物語るテレビ・アニメというものを、後に同じ上田P原案の「TEX…

Layer:11 Infornography - Inforno

冒頭からアヴァン・タイトルのバンクにインサートされる新作カット。 玲音が自らデヴァイスになっていく通過儀礼。 ケーブルを結線し、スキンパッドも装着。 サブタイトルはこれまでの全てをマルチで見せきる野心的な試み。 コンテ:中村隆太郎 演出:松浦錠…

シリーズの終わりで玲音は――

実際にはこの時制よりもうちょっと早い時期――、7,8話辺りのホン読み会議の時だったと思う。 私は予定を1時間勘違いしてトラスタに来てしまい(そういう事はままやってしまう)、1階の会議室兼試写室でぼうっと時間を潰していたら、私を見掛けたスタッフが中…

先達への畏敬と独自性の確立

「serial experiments lain」は他に例がない様な独自な内容・表現をする野心で作っていたが、テレビ・アニメという枠なのだから何れかのジャンルには区分される。 サイコ・ホラーと思われるのは個人的には心外なのだが(怖がらせようという意図で作ってはい…

Layer:10 Love - Wrapped with wires

ナイツのメンバーを暴き出す為に、玲音は自らの身体にワイヤーを巻き付け、唇にワニ口クリップをつけてまでワイヤードに没入せざるを得なかった。それはしかし、身体の機械化というよりも、自縛というメンタリティに陥っていた精神面の方が大きい。 MIBの二…

Layer:10 Love - Exposure of "Knights"

この回はここから展開にドライヴが掛かる。 実際には掛けざるを得ない事情があったのだが。 シナリオでは先にここで「ぐるぐる玲音」化するのだが、カタルシス先行の意図だろう、コンテでこうなった。 ワイヤードでは一人ではない。ワイヤードなら何でも出来…

Layer:10 Love - Father's farewell words

「ただいま」 ドアを開けて、身体を少し回して入ってくる玲音のアニメーションがこれまたリアル。こういう描写が入るだけで、この映像作品が「生きた人間」を描いていると伝えられる。 岩倉家は荒廃している。 玲音がモラトリアム状態に陥っている間に、既に…

Layer:10 Love - Transparent

登校してくる玲音。 前々回、玲音は「更にもう一人の玲音=lain」が取り返しのつかない罪を犯した事から、自分が本当に「なんだって出来る」存在であるというのなら、全校生徒の記憶を消去しようと試みた。しかし、lainが自分の代わりになりすまし、玲音自身…

Layer:10 Love - Psychodrama

アヴァンはヴォイス・オーヴァーなし。SEは更に混沌化。 コンテ:佐藤卓哉 演出:村田雅彦 作画監督:菅井嘉浩 このシリーズでは初めて前話からの直結で始まる。 「たった一つの真実、神さま」「そう、僕だよ、玲音」 完全に舞台上での対話劇。物語の本質に…

ジャコのボディ・ペインティング

ジャコ・パストリアスが図抜けた才能あるベーシストとして知られ始めたのが1970年代終盤。Weather Reportに加入し、スタジオ・アルバム4~5枚の録音と、数多くのツアーで世界を席巻して、脱退するまでが1981年。 自分のビッグバンドを立ち上げ、日本を含めた…

Layer:09 Protocol - Manifestation of Deus

玲音は閉じこもっていた家から出る。 空を見上げ――「『たった一つの真実』――、神さま……」 すると答える。「そうさ、僕さ」 この9話でデウスの台詞はただ一つここだけ。 中村隆太郎監督はこの終盤のシナリオの柱を組み替えて、ここで最後のドキュメンタリ・パ…

Layer:09 Protocol - Memory Check

9話の回顧が短めに終わりそうなのは、一見混沌に満ちた様に見えるこの回が、ドキュメンタリとドラマを交錯させる構造にする事で、多くの情報を一挙に整理し、提示出来ていたからだった。改めてここで記さねばならない事があまりないのだ。 ロズウェル事件と…

Layer:09 Protocol - Death to Taro

玲音はリアル・ワールドで自分の知らない玲音が頻繁に見掛けられるサイベリアへ赴く。 その姿を見つけたJJ、指笛で玲音を呼んだ。 忘れ物だと、封筒を手渡される。 勿論玲音に心当たりは無いが、この一連のJJの言動は、彼が何ら謀略的な事には関与していない…

Layer:09 Protocol - Roswell Incident

全13話何れにも思い入れはあるが、好きな話数というとやはりこの9話になる。 自ら映像作成に関与したからもそうだが、何より話法として独自性を最も発揮出来た。シリーズとしての物語はまとめに掛かる段階だからこそ、思い切った。 ただ、当初の意図としては…

「魔法使いTai!」

実写ライターの私が、本格的にアニメに参加する様になった初期作品の一つであるOVA「魔法使いTai!」の経緯は、ここで既に述べた。 この頃はソフトがよく売れた時代で、この作品もOVAなのにサントラは勿論の事、イメージ・ソングCDなども何枚かリリースされ、…

「lain」の実写

9話の回顧に入る前に、なぜこのアニメ・シリーズで実写素材を多く入れたのかと、その一部を私が製作した経緯を説明しておきたい。 一部はTwitterカウントで「デジモンテイマーズ」の回顧の時に書いているのだが、Tweetの繋がりだけでは判り難い部分もあった…

Layer:08 Rumors - Deleting Memories

再び畳の間。 今度は口だけの人間ではなく、文楽人形の様な玲音の複製人形が居並んで口をガタガタさせている。これも震えと口の動きが揃っていたら興冷めになる訳で、撮影で精緻にタイミングがズラされている。つくづく酷な話数になったと思う。 玲音(レイ…

Layer:08 Rumors - lain vs lain

ありすの部屋で然様な出来事が起こっていたという情報が、ワイヤードを駆け抜けていく。 玲音は自分のベッドの中でそのあまりに残酷な事実――自分が認識しない自分がしてしまった事――に、悲痛な声を上げるしかなかった。 この場面はシナリオにはなくコンテで…

Layer:08 Rumors - Battle of Rumors

さて問題のシーン。 もう20年も前の作品だし、今更シナリオの書き手がガタガタとナイーヴな事を言ってもみっともないのは判っているのだが……。 事実として、シナリオの「直接的ではない描写で最大限に視聴者にショックを与え」ようという意図を、上田P、中村…

Layer:08 Rumors - What I've done.

いたたまれず玲音は教室を飛び出すが、廊下にいる生徒達、校庭にいる生徒達からも非難の視線を向けられ、逃げ場を失っていく。 「ありす、どこ? どこにいるの?」 ありす自身は教室にいるのだが、玲音は魂と肉体の乖離している状態が長くなっており、ありす…

Layer:08 Rumors - Tatami

今話は、内容の重さから私個人的になのだが、「見返したい」と積極的に思えるエピソードではなかった。だが、「lain」というシリーズに於いて物語の上では勿論の事、中村隆太郎監督のコンテの超越度、岸田さんをはじめとする作画陣の描き上げたヴィジュアル…

Layer:08 Rumors - Not denied.

静謐に、しかし視聴者の神経を確実に削っていくパート。 玲音がリアル・ワールドに帰還し自室から出ると――、 廊下の突き当たりに美香が立っていた。 食堂のある階下へ降りると――、何故か両親は並んで座っている。 イモーターは発売されている。 両親は玲音を…

Layer:08 Rumors - The Beginning of Collapse

「Rumors」というサブタイトルは、最初に作成したラフ構成では4,5話辺りに想定していた。ネット・コミュニケーションをモチーフに物語を編むなら、そうしたエピソードは在って然るべきだった。 ネットに流れる真贋の噂、本来秘匿されるべき個人情報や知られ…

中村隆太郎監督とジャコ・パストリアス

「lain」製作中、隆太郎さんとプライベートに話す機会は殆ど無かった。隆太郎さんは監督として限界を越える激務をこなしていたのだから当然なのだが。 しかしホン読みの後かアフレコ前か、ちょっと雑談する機会は幾度かあった。また音楽の好みの話なのだけれ…

Layer:07 Society - Burned substrate

ショウちゃんママは、「お仕事」を優秀さ故にさっさと終わらせ、子どもとゲームで遊び始める。 ママの仕事が情報庁情報管理局へのサイバー・アタックだったのか、「ワイヤードのレイン」への接近なのか、ねずみの始末だったのか、それは判らない。 その「仕…

Layer:07 Society - Interrogation

玲音は青い目のMIBに随行する事を承諾した。 シナリオでは新橋の雑居ビルなのだが、周りの風景はあまり新橋っぽくはない。 ここからの長い場面は、冷戦時代のスパイ物的なドラマになっている。 狭いビルの階段を上っていくと―― 橘総研のオフィスだと書かれて…

Layer:07 Society - Delivery device

そして3人目の「ナイツ」は「ショウちゃんママ」。 NAVIはピザ・ボックス型で、当時だとSun MicrosystemsとかのWorkstationがこんな筐体だった。 内職して買った、と言っているが、正規の収入かは疑問。 小さな梱包物を配達にきたのは、玲音に最新型NAVIを配…

Layer:07 Society - lain and Alice

授業中、玲音はコードを高速で見ている。恐らくLisp。 携帯NAVIまで拡張している。 ありすは玲音がワイヤードに没入していく事が心配でならない。 そして二人目のナイツ――は実に、その、な……、 しかしこの背景凄い。 すいません。完全に「ステロタイプ」なキ…

Layer:07 Society - Knights of the Oriental Calculus

リアル世界では全く面識無い同士が、ネット内で共謀する悪意あるハッカー(クラッカー)という存在は実際に実例は無かったものの、「いても不思議ではない」とは思っていた。 デウスを信仰し、様々な意味のある無しに関わらずミッションを遂行するオンライン…