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serial experiments lain 20th Anniversary Blog

Layer:01 Weird - Chaos

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 さて長々と記してきた1話の回顧もここまでとなる。
 最後のくだりについては、もうシナリオ云々ではなく、中村隆太郎監督の演出パワーに尽きるのだが、言及しておかねばならないのが、鶴岡陽太音響監督と音響効果の笠松広司氏の作り上げる音響デザインである。

 

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 シナリオでは確かに電線が「わーん」と音を唸らせるという描写は書いたものの、普通の住宅街の電線に音が鳴っていたら生活出来る筈がない。
 玲音は電波/電線過敏症なのだというイメエジでの描写だったから、どんな効果音がついても構わなかった。
 しかし笠松さんは変電所まで行ってコイルが唸る音を録音してきた。
 シナリオにもコンテにもない、ハードディスクがシークする微かな音もつけてきた。

 

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serial experiments lain」は決してカルトな作品にしようという意図を抱いていた訳では無いが、カルト的な要素があるとするなら画面以上に音響のもたらすトランス感は大きいと思う。

 過日の1話同時視聴のTweet群の最後の辺りで、この動画を紹介された方がいた(私は知らなかった)。
 元はYouTubeに投稿された、英語圏の人による「lainの音響批評」動画に日本語訳字幕をつけられたものだ。(なので、見た方は元動画を1分以上再生して『いいね』を押して欲しい)。元動画、訳動画作者の方々に感謝を述べたい。
 少なくとも私は、製作側の意図を正確に読み取って言語化されていると感心した。
 1話終盤のカオスな展開も、この動画の解釈ならそう難解ではない筈だと思う。

 

 

元動画

 

 私は無闇に難解なものを作りたかったのではない。ただ、一回さらっと見て消費されてしまう一過性のものを作りたくなかった。見終えたら、「今の何だったんだ」と考えて貰えるものを作りたかった。

 

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 電柱と電線は、愚直なまでにリアル・ワールドに視覚化されているネットワークの暗喩そのものだが、ドイツ表現主義派映画的にここまで誇張されると、何かまた別なものを表している様に思えてくる。そんな幕切れになった。