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serial experiments lain 20th Anniversary Blog

Layer:02 Girls - Accela

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 名前すらない「少年」がアクセラという精神高揚剤を摂取する。
 最初は普通に薬物にしていたのだが、当時でもテレビでそういう描写は駄目だったので、だったらメカにしておけばいいや――という問題では無かったのだが、一応これで通ってしまった。
 アクセラという名称はアクセラレーター(加速させるもの)から採っており、当時のPCでは映像表示力が弱く、ビデオ・アクセラレータというデヴァイスがあった。厳密には違うのだが今のGPUの様なものだ。メカという発想はそこから来ている。
 安倍吉俊君がデザインしたのだが、これがトゲトゲで(いやまあ『刺激する』裝置なのだから正しいのだけど)、どう見ても呑みにくそうで、カプセルに入れるしかないのだが、そうすると薬物と外見は全く変わらなくなってしまう。
 どうしようと言っていたら、3Dをモデリングした中原順志君が「じゃあグミに入ってる事にしたらいいんじゃん」と極めてスマートな解決法を提示してくれた。

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 近年になって、子どもや年寄りが嚥下薬物を摂取し難いのを助ける、ゼリー食品が市販される様になっており、このアクセラは先見の明があったと言えなくもない。
 ただ、メカですよとはっきり判らせる為にグミも割って、少年は直に呑む(作用は一層過激になるリスクがある)。

 

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 解説場面はジャンプして玲音の授業中にインサートされる。アナウンサー的ナレーションは伊藤秀敏さんによるもので、いかにもプロフェッショナルなナレーターというトーンが「lain」では極めて重要な要素になった。

 ナノメカニズム、と言うのは嘘で、ミクロ程度なサイズはあるのだが、この解説場面で出てくるA-12というのは、CIAが開発した偵察機SR-71 Black Birdのプロトモデル名。
lain」ゲームの開発スタジオ(というかユニット)の名前がSR-12Wで、「これ何の略?」と訊いたら、SR-71とA-12の合成だというので「あ、判った。もういいです」とそれ以上は訊かなかった。

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 摂取した少年は意識を加速させるが、その意識の中で彼は、彼をかつてその場で罵った少女の姿を視る。

 

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