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serial experiments lain 20th Anniversary Blog

Layer:02 Girls - Spirituals

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 この回のメインのメッセージがこれなのだが、他のあまり意味のないテキストと紛れさせている。
「人はみな、つながっている」のが「lain」のテーゼで、それは良きにつけ悪しきにつけ、そもそもそうなのだという前提だった。

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 ワイヤードがどの様にリアル・ワールドに侵食してくるのか。「lain」での序盤では、明らかに「死後世界」をモデルにしている。
 ホラー的なフックを選んだのはそれ故だった。
 物語が進むと、全くそれとは異なる位相が見えてくるのだが。

 

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 学校内で玲音は再び幻視する。
 シナリオでは明確に「もう一人の玲音」なのだが、中村隆太郎監督は「まだそれは早い」と判断されたのか、1話終盤で電車に飛び込むセーラー服の女子高生の顔をバンク流用して、鴎華学園の制服を着た無気味な少女と、最早人かも判らない何かの群れという表現になっている。

 

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 玲音の肉体を通過していく描写は完全にアナログなアニメーションで表現されていて、今見ると実に味わい深い。

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 玲音にとって、現実と幻想は切り分けられない状態だというのが1,2話の提示であった。そしてワイヤードに接する様になって、その傾向は一層顕著になっていく。

 ところでこうした幽霊をなんと書いたら良いのか悩んだ。
 「ゴースト」だと「攻殻機動隊」に抵触して別な意味になってしまうし、「シェイプ」(亡霊)は「TEXHNOLYZE」で使ったし、「ファントム」は「lain」劇中ゲーム名にしてしまった。

 

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 帰宅すると、康雄がワイヤード発注していた新型NAVIが配達されてきている。
 好青年の配達人だが、彼もまた玲音を取り巻く虚構の一つ。

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 橘総研のロゴ入り段ボールは、かつてのPC/AT互換機の勇Gateway(牛の白黒模様)のそれを思わせる。

 

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 部屋で父の帰りを待つカットはバンク。

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 玲音が階下へ降りると、両親は大きな子どもがいる夫婦では有り得ない様な接吻をしているのを凝視する。

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 流れは一緒なのだが、シナリオとコンテでは玲音の心情が異なっていた。シナリオでは、ありすと約束させられた「サイベリアへ行く」事が気になって、NAVIの設置は今夜じゃない方が、と言いかけるのだが、隆太郎さんのコンテでは寧ろ「今すぐ設置して欲しい」と、父親にせがんでいる。

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 玲音のNAVIとワイヤードへの関心の変化に気づいた康雄がとるリアクションは、虚無的になるというもので、3話でもそれは反復される。

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 いよいよ玲音のCopland OS NAVIに灯が入る。
 今話は安倍君のラフなデザインで作画されているが、徐々に複雑化していくディテイルはところともかずさん(エンディングの作画も)がレイアウトを担当される事になる。

 

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 2話のシナリオ打ち合わせ時、隆太郎さんが唯一異議申し立てをしたのが、「玲音はギリギリまでサイベリアへは行きたがらないと思う」だった。
 隆太郎さん不在時に書き終えていた2話だが、コンテ・インする前にそう指摘されて、私は了解したのだけれど、思えばもうこの時に、玲音がどういう少女であるのか、隆太郎さんの中に既に実存していたのだと思うと、些か驚く。