玲音は自室の肉体に戻り、ナイツに問い質す。
これまで玲音に優しく接してきたナイツが、若干混乱している。
はぁ、と天井を見上げると――、レーザー・ポインタの光点再び。
もうか弱い玲音ではない。
床の水を跳ね上げながら、部屋を飛び出していく玲音。
その間に、冷却コンプレッサーのゲージが異常値を示している。
やはり、MIBがそこにいる。玲音は彼らを「ナイツ」だと思っている(視聴者もだろう)。
しかし二人は動じない。彼らがここに居るのは、実は玲音を守る為であった。
伏せろ、と言うMIB。
玲音にはすぐに理解されないが――、
コンプレッサーのタンクが破裂し、
玲音の部屋のNAVIが損壊。
MIBは、その爆発はナイツが発した「パラサイト・ボム」の仕業だという。
ネットを介して物理的な破壊攻撃が出来るのかについては、2009~10年にイランの核施設を破壊した「スタクスネット Stuxnet」が有名だ、と今ならこうして書ける。
ドイツSimensの機械装置を動かすシステムソフトに仕込まれたマルウェアを使いルートキットで自らの痕跡を消しつつ破壊活動(自壊活動)をさせる仕組みであった。
普通の家庭ならボヤを起こせる程度しか攻撃出来まいが、玲音の部屋は大規模な冷却システムとコンプレッサー、ガスのタンクなどがあった為に被害が大きかった。
「あなたたちはナイツじゃないの!?」
「我々はナイツではありません」
そう言ってMIBは去って行き、玲音は(そして視聴者も)茫然と立ち尽くす――
今話は異様に力の入った画面で、レイアウトが4人掛かり(岸田さん含む)で、原画陣も豪華。爲我井克美氏も参加してくれていた(私の関わりだと「魔法使いTai!」「ふしぎ魔法ファンファンファーマシィー」)。
私はなかなか言及出来ないのだが(それは直接的に聞いていないからなのだが)、もう1人のプロデューサーであったトライアングル・スタッフ(当時/現ACGT社長)の安部正次郎氏の苦労は如何ほどであったかと思う。
テレビでやっていい限界はもう越えつつあった。
私は「現場が大変そう」と聞かされるだけで、シナリオライターは当然その段階で貢献出来る事はないのだが、如何に現場の負担を軽減させるシナリオにしていくかという事にも、半ば意識的に指向していく。