Written by Man In Black (Alternative Journalist)
Published at the present day, present time.
"All Reset"
魔法の言葉だ。私たちは随分前にそれが宣言されたのを聞いた気がしているかもしれない。しかしこのリアル・ワールドで、その言葉を聞きたくはない。
そもそもそんな事が人間によって為されるものなのだろうか。私たちの多様な価値観、思想、そして記憶――全てをリセットなど――
可能なのだ。いや、それを可能にすべく、周到にテクノクラートたちは準備をしてきているのだ。
ワイヤードという“もう一つの世界”がリアル・ワールドとレイヤーで重なった時から、私たちはコミュニケーションを飛躍させてきた。情報の共有はビットの単位ですぐさまに広まる。しかし無尽蔵な情報の奔流の中で、「たった一つの真実」に触れる事など、とても不可能に近しいとも思える。
“誤った情報”ならまだいい。後で正す事が出来る。しかし意図的に歪められた情報がいとも簡単にリアル・ワールドの人々に悪い影響を及ぼす事もこれまでに多く見てきた。
ネット・ニュウズのアンカーが、異常なプロパガンダを繰り返す様になるのを見る以前から、メイン・ストリーム・メディアMSMの伝える情報にはバイアスが異常なまでに掛かっており、全く信頼出来ないものへと堕してしまった。
全く信用ならない組織、国際機関の発表する数字が無批判に受けとめられるなどと思われているなら、よほど私たちは思考力すら持たない受動マシンだと見くびられたものだと言える。
ネットに存在するリソースに依拠したオープン・ソース調査を私は続けてきた。
暫く前に、アジアで局所的に流行した向精神ナノマシン「アクセラ」は、飲み込んだ者の時間認識を加速させ、DMT的な作用をもたらすが、胃酸によって24時間内には消化され、体内には蓄積されないという触れ込みだった。しかしそれは事実ではなく、マイクロマシンによる免疫系への作用は持続され、頻繁にフラッシュバックが起こり、多くの死亡者を記録した。このアクセラの体内微弱電流駆動システムは、日本のハイテク技術のシンクタンクが試作していたものだという証言がある。そして危険な冒険を求める夜の若者に意図的に配布されたとも言われる。
1960年代後半、アメリカ・サンフランシスコのヘイト・アシュベリー地区で、ヒッピー達に「無料診療所」が配布したのがLSDだった。これがCIAのMKULTRA作戦の一つであり、左翼系ヒッピーを弱体化させる意図があったと見る向きもある。
しかし「アクセラ」の配布にはもっと深い意図があったのかもしれない。そしてその「実験」の経過は注意深く「誰か」に観察されていた筈だ。
同じ頃、VRゲーム「ファントマ」のコア・ユーザがリアル・ワールドで暴走する例もあった。1980年代に存在したというアーケード・ゲーム「ポリビウス」は、CIAの様な機関が設置した実験だった――というのは2000年代に入って捏造された歴史だった様だが。
しかしゲームというものが、どれだけユーザの全神経を傾注させるものかを考えれば、そこに異なる「意図」が盛られていてもプレイする側には構われない。「●●モンGO」が元々はCIAに関連する機関が開発したもので、恣意的なリアル・ワールドの「スポット」にユーザを集め、彼らの端末の情報、映像データが吸い上げられていた――というのは全くの陰謀論ではないのだ。
もう固有名詞を書いてしまうが、橘総研というハイテク企業は、コンシューマのNAVIも設計するグローバル企業だが、ネット・インフラの開発が本来の役割だ。彼らは暫くの間、IPv7の策定に関わっており、全てのワイヤードにおけるトラフィックそのものを変えようとすらしている様に見えた。シューマン共鳴を導体にして、人と人、人とワイヤードをデヴァイスレスで繋ごうとしていた様だが、現時点では非常におおまかな「気分」の共鳴程度しか出来ない筈だ。
一方、マシンのナノ化は更に進化し、今やアクセラの様なデヴァイスも量子ドット化されており、機能を拡大させているらしい。人体が生存している限り機能し続け、かつ脳に近い部位にまで自ら移動し、電磁界域に於いて直接脳にアクセスを可能にする様なデヴァイスが、今や完成しているかもしれないのだ。
そしてそれは、今や注射器など用いなくともスタンプの様に膚に圧し着けるだけでインストールが出来る。既にデジタル生体IDとしての実用化が近い。また、例えば何らかの疾病による世界的なパンデミックが起こった時こそ、免疫パスポートという名目で個人個人に強制的にインストールする事も考えられる。
それによって人間という肉体、及び精神の限界を越えた能力が手に入るのだ、と喜ぶ人もいるだろう。ジュリアン・ハクスリーの提言した「トランスヒューマニズム」が目指すのはそれだ。テクノクラートによるテクノクラシーである。H.G.ウェルズは映画の脚本でこれを描いたが(『来るべき世界』1936)、例えば医学、特に疫学・病理学、視野を広げれば気候変動についての公的見解についてなど、「最新の科学」が信頼出来なくなるなどという、過去には想像すら出来なかった現在の立ち位置から見れば、テクノクラシーなどユートピアとは程遠く、ジョージ・オーウェル、オルダス・ハクスリーの描くカキストクラシーに等しい。テレパシーが使えたらいいと夢想する少年も、自分の妄想までもが見知らぬ他人に見られてしまう事など望む筈もない。
世界人類のデジタルID制は、携帯NAVIの端末によって現在は既に実現している国もある。SIMや端末を破棄すればそのIDから逃れられる。しかし肉体そのものに刻印されたら、もう後には戻れないのだ。
「グレート・リセット」後に起こるだろう事は、単に銀行などの金融システムが再編されるのではない。今「リセット」という言葉を発している領域の限られた人々による、新しい世界秩序がもたらされる。国境の問題ではないのだ。個人の認識、思想、プロパティ、共有される歴史、何より、個人の自由意志――、そうしたものが一元に管理されようとしているのだとしたら、私たちは、今、これをここまで読んできた人なら、可能な限り抵抗する筈だ。サイコパスに未来を委ねてはならない。
私たちが例外なくよく知っている、あの少女がどういう選択を最後にしたか。それを見ているのだから。
そして、彼女がどれだけ自身の心を痛めたかのかも、知っているのだから。