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serial experiments lain 20th Anniversary Blog

陰謀論者による視点 A Conspiracy Theorist's View

Written by Man In Black (Alternative Journalist)
Published at the present day, present time.

 


"All Reset"

魔法の言葉だ。私たちは随分前にそれが宣言されたのを聞いた気がしているかもしれない。しかしこのリアル・ワールドで、その言葉を聞きたくはない。
そもそもそんな事が人間によって為されるものなのだろうか。私たちの多様な価値観、思想、そして記憶――全てをリセットなど――
可能なのだ。いや、それを可能にすべく、周到にテクノクラートたちは準備をしてきているのだ。


ワイヤードという“もう一つの世界”がリアル・ワールドとレイヤーで重なった時から、私たちはコミュニケーションを飛躍させてきた。情報の共有はビットの単位ですぐさまに広まる。しかし無尽蔵な情報の奔流の中で、「たった一つの真実」に触れる事など、とても不可能に近しいとも思える。


“誤った情報”ならまだいい。後で正す事が出来る。しかし意図的に歪められた情報がいとも簡単にリアル・ワールドの人々に悪い影響を及ぼす事もこれまでに多く見てきた。
ネット・ニュウズのアンカーが、異常なプロパガンダを繰り返す様になるのを見る以前から、メイン・ストリーム・メディアMSMの伝える情報にはバイアスが異常なまでに掛かっており、全く信頼出来ないものへと堕してしまった。


全く信用ならない組織、国際機関の発表する数字が無批判に受けとめられるなどと思われているなら、よほど私たちは思考力すら持たない受動マシンだと見くびられたものだと言える。

 

ネットに存在するリソースに依拠したオープン・ソース調査を私は続けてきた。
暫く前に、アジアで局所的に流行した向精神ナノマシンアクセラ」は、飲み込んだ者の時間認識を加速させ、DMT的な作用をもたらすが、胃酸によって24時間内には消化され、体内には蓄積されないという触れ込みだった。しかしそれは事実ではなく、マイクロマシンによる免疫系への作用は持続され、頻繁にフラッシュバックが起こり、多くの死亡者を記録した。このアクセラの体内微弱電流駆動システムは、日本のハイテク技術シンクタンクが試作していたものだという証言がある。そして危険な冒険を求める夜の若者に意図的に配布されたとも言われる。

1960年代後半、アメリカ・サンフランシスコのヘイト・アシュベリー地区で、ヒッピー達に「無料診療所」が配布したのがLSDだった。これがCIAのMKULTRA作戦の一つであり、左翼系ヒッピーを弱体化させる意図があったと見る向きもある。


しかし「アクセラ」の配布にはもっと深い意図があったのかもしれない。そしてその「実験」の経過は注意深く「誰か」に観察されていた筈だ。


同じ頃、VRゲーム「ファントマ」のコア・ユーザがリアル・ワールドで暴走する例もあった。1980年代に存在したというアーケード・ゲーム「ポリビウス」は、CIAの様な機関が設置した実験だった――というのは2000年代に入って捏造された歴史だった様だが。


しかしゲームというものが、どれだけユーザの全神経を傾注させるものかを考えれば、そこに異なる「意図」が盛られていてもプレイする側には構われない。「●●モンGO」が元々はCIAに関連する機関が開発したもので、恣意的なリアル・ワールドの「スポット」にユーザを集め、彼らの端末の情報、映像データが吸い上げられていた――というのは全くの陰謀論ではないのだ。


もう固有名詞を書いてしまうが、橘総研というハイテク企業は、コンシューマのNAVIも設計するグローバル企業だが、ネット・インフラの開発が本来の役割だ。彼らは暫くの間、IPv7の策定に関わっており、全てのワイヤードにおけるトラフィックそのものを変えようとすらしている様に見えた。シューマン共鳴を導体にして、人と人、人とワイヤードをデヴァイスレスで繋ごうとしていた様だが、現時点では非常におおまかな「気分」の共鳴程度しか出来ない筈だ。


一方、マシンのナノ化は更に進化し、今やアクセラの様なデヴァイスも量子ドット化されており、機能を拡大させているらしい。人体が生存している限り機能し続け、かつ脳に近い部位にまで自ら移動し、電磁界域に於いて直接脳にアクセスを可能にする様なデヴァイスが、今や完成しているかもしれないのだ。


そしてそれは、今や注射器など用いなくともスタンプの様に膚に圧し着けるだけでインストールが出来る。既にデジタル生体IDとしての実用化が近い。また、例えば何らかの疾病による世界的なパンデミックが起こった時こそ、免疫パスポートという名目で個人個人に強制的にインストールする事も考えられる。


それによって人間という肉体、及び精神の限界を越えた能力が手に入るのだ、と喜ぶ人もいるだろう。ジュリアン・ハクスリーの提言した「トランスヒューマニズム」が目指すのはそれだ。テクノクラートによるテクノクラシーである。H.G.ウェルズは映画の脚本でこれを描いたが(『来るべき世界』1936)、例えば医学、特に疫学・病理学、視野を広げれば気候変動についての公的見解についてなど、「最新の科学」が信頼出来なくなるなどという、過去には想像すら出来なかった現在の立ち位置から見れば、テクノクラシーなどユートピアとは程遠く、ジョージ・オーウェルオルダス・ハクスリーの描くカキストクラシーに等しい。テレパシーが使えたらいいと夢想する少年も、自分の妄想までもが見知らぬ他人に見られてしまう事など望む筈もない。
世界人類のデジタルID制は、携帯NAVIの端末によって現在は既に実現している国もある。SIMや端末を破棄すればそのIDから逃れられる。しかし肉体そのものに刻印されたら、もう後には戻れないのだ。


グレート・リセット」後に起こるだろう事は、単に銀行などの金融システムが再編されるのではない。今「リセット」という言葉を発している領域の限られた人々による、新しい世界秩序がもたらされる。国境の問題ではないのだ。個人の認識、思想、プロパティ、共有される歴史、何より、個人の自由意志――、そうしたものが一元に管理されようとしているのだとしたら、私たちは、今、これをここまで読んできた人なら、可能な限り抵抗する筈だ。サイコパスに未来を委ねてはならない。
私たちが例外なくよく知っている、あの少女がどういう選択を最後にしたか。それを見ているのだから。


そして、彼女がどれだけ自身の心を痛めたかのかも、知っているのだから。

 

 

ファンアート・ムック「BREAK THE BORDER」

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 このタイトルに込められた意味は、恐らくは「ファン」と「公式」、「リアル」と「ワイヤード」、2次元と3次元――、そういったものが「領域」なのだろう。そして確かに、その領域は崩れていた。


 2018年夏のファン主催イヴェント「クラブサイベリア」は、「serial experiments lain」劇中に登場する“渋谷のクラブ”をリアルに一日だけ再現しようという、実に刺激に満ちた企画だった。放送20周年という契機でもなければ、「知る人ぞ知る」1クールのアニメのイヴェントなど、開催は不可能だったと思う。
 クラブサイベリアは、単に音楽と飲み物提供だけではなく、劇中の数々を再現する試みや小イヴェントも盛り込まれていた。
 しかし一番の売りだったのは、〈新たに〉描かれたlainのファンアートを募り、ラウンジの壁一面を埋め尽くすという「lain尽くし」の空間を作り上げた事だろう。

 ファンアートは、イヴェントには実際には来られなかった人の作も多く、全てはTwitterを通じて募られたものだった。
 プロの作をも迎え、20年後に新規に描かれたファンアートは、主宰のシオドア @teodoro_m9 氏からイヴェント後に冊子化される事もアナウンスされていた(クラブでの掲示と冊子への収録は別個に確認がとられていた)

 クラブサイベリアで、岩倉美香のコスプレをしながらDJとして参加していた@__stein(石林グミ)さん(日詰明嘉氏と二人で『TEXHNOLYZE』の自主製作ムックを3冊作ってくれた)が編集し、「BREAK THE BORDER」という美麗な同人誌が出来上がった。
 普通の同人誌より割高ではあるが、全ページがカラーで、ファン・アートだけではなくクラブサイベリア当日の様子も、オフィシャル・フォト担当小馬谷優介氏による多くの写真が収録されていて、どういう雰囲気であったかを伝えてくれている。


 20年前に放送を終え、暫くネットでのファン活動が盛り上がった掉尾に、ファン・アートを収めたCD-ROMが有志の方々で作られた事を改めて思い出す。
 20周年を祝うファンの人達の〈熱〉が、この様な形でまとめられたのも、何か運命的なものを感じる。


 既に予約分は完売した様だが、入荷待ちリクエスト(数が多ければ増刷)を受け付けている。

 

booth.pm

TEXHNOLYZE 15th

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 今年2018年が「serial experiments lain」放送20周年であるなら、「TEXHNOLYZE」放送から15周年という事になる。
 これまた公式では何の動きもなかったのだが、コミケで昨暮から3回連続でスタッフも巻き込んだ同人誌(というよりは自主製作ムック)が作られた。極めて稀少な「TEXHNOLYZE」ファンの実存をしっかりと確認出来て、今年良かった事の一つだった。


serial experiments lain」のネット同時視聴会が終わって暫くしてから、「TEXHNOLYZE」の同時視聴会も開催された。「lain」よりは人が少なかったが、数少ない熱心なファンが再び同時に鑑賞し、ツィッター上に実況が流れた。


“ルクスルクスこんにちは”同人誌の2冊目で、私は浜崎博嗣監督と一緒に取材を受けたのだが、この時は放送時以来見返していない状態で、あまりに記憶から消えている事が多く、これは見返さないとと思っていたのだが、同時視聴会があってやっと見返す事が出来た。

 このシリーズに於ける私には、上田耕行プロデューサー原案のあまりの危険さに、私なりに「しかし日本のアニメ視聴者に向ける作品なんだから」という塩梅と、「本当にやっていいんだな」という野心が奇妙に交錯していた様だ。
 私なりの覚悟と計算があっての構成任務だったが、15年ぶりに見返して思ったのは、やはり「一線を越えていたな」というものだった。内心「越えていたかもしれない」とは思っていたのだが、やはり越えていた。
 私自身は勿論だが、30分シリーズの話法として「ここまで行ってはいけない」という多山の石としての動かぬ基準ともなったと思う。

 残酷描写や台詞の少なさはともかくも、誰が殺されたのか字幕が入らないと判らないのでは「意図しない曖昧さ」しか視聴者に与えない事になる。「TEXHNOLYZE」のシナリオはこの点に於いて、はっきり失敗をしたと断言して差し支えない。

 ファンには知られているが、このシリーズのDVDには特典として「死亡字幕」なるものを再生時に表示させるオプションがある(廉価ボックス版には未収録)。これという特典映像も作る余裕もない中で、ソフト・オーサリング時にコストを掛けず(SRTテキストを作成するだけ)追加出来るジョークとして秀逸――という評価を受けていた。この字幕は上田Pが作成している。

 序盤から刺客が迎え撃たれるという場面があるが、リアル系のキャラクターで髪型も髪色も概ね変わらぬ使い捨てキャラクターが、どの組織に属していたのかをいちいち説明台詞でフォローするのは無粋。シナリオを書いている時点ではそう考えていた筈だ。
 しかし字幕を入れて観てみれば、ストーリーを掴むストレスをずっと軽減出来る事を私自身が身を以て体験してしまった。
 これは作劇がネタに負けたと言わざるを得まい。

 

 

TEXHNOLYZE」の描いた物語自体は、完全に完結した虚構であり、当時の私はある種の創作神話を意図していた(構造的にはハードボイルドだったが)。吉田伸氏、古怒田健志氏、高木登氏(これがアニメ・デビュウ脚本)らと共に、筋とキャラクターは単純ではないベクトルを形成する事が出来た。この点に於いては満足している。
 映像作品としての濃密な完成度は、ひたすら浜崎博嗣監督によるもの。ともすれば時代遅れ、古臭いモチーフに陥りかねない闇社会抗争劇を、主人公に視聴者を寄せて不可解な世界を「体感」させる事に成功した。今尚'(稀少ながら)熱烈なファンを持てるのもそれ故だと思っている。


 シリーズのモチーフとなっていた、装置による人体改造と、それに伴う意識の変容という事については、この数年俄に注目されてきた「トランスヒューマニズム」とかなり近接しているのは皮肉に思っている(昨年の米大統領選で泡沫ではあるがトランスヒューマニスト党首が出馬した)
 トランスヒューマニズムの是非、というよりも一般的な直感としての嫌悪感を一旦脇に置いてみると、トランスヒューマナイズド(などとは呼ばれないだろうが)がネットを介した情報をAI処理するのは至極自然だ。肉体を欠損させたくなければチップをインプラントする事で済むのも簡便だ。

 だが――、人の進化とはそういうものなのか。
 人性を高める事とはやはり掛け離れている様に感じる。
 勿論、トランスヒューマニスト達が掲げる宣言には、単なる利便性ばかりではなく、人同士のコミュニケーションを含めて差別や偏見をなくしていくという理想も語られてはいるのだが。

 有り得ない仮定だが、もし「TEXHNOLYZE」が近年作る企画であったなら、このトランスヒューマニズム問題にどっぷりと首を突っ込まねばならなかっただろう。
 15年前に作っておいて良かったと思う。


 来たるコミケで、一旦終了となる“ルクスルクスこんにちは”「We Are Texknolyzeds」が頒布される。

 

Duvetのシングルレコード発売

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 夏のクラブサイベリアが終わった頃だったか、disk Unionのシネマ館レーベルの人からフォロー要請があり、DMを貰った。
「Duvet」を放送20周年の今年、かつては出された事のないアナログ・レコードで発売したい。ついては本ブログの文章をライナーに転載してよいか、という要請だった。
 本ブログは「Duvet」についてから書き始めている。今も尚、気軽に聴く事が出来て「serial experiments lain」シリーズ全体を思い返そうとした時、この楽曲ほど強力な装置は無いからだ。
 ブログの1エントリだけではライナーとして収まりが悪いと感じ、多少の加筆をした原稿を送った。

 ただ、それから結構間が開いた。
 案の定と言うべきか、権利元との交渉に時間が掛かっていた。交渉に時間が掛かるというより、交渉する相手に行き当たるまでが難関だった様だ。
 しかし企画・担当者の人の熱意は結果を導いた。
 この人が熱烈な「lain」の支持者である事は、ユニオンの紹介ページのテキストを読めば判る筈。
 20周年イヤーである2018年内に、この「serial experiments lain duvet ep」をリリースして貰えた事に心から感謝している。

diskunion.net

 

 今年はこの曲を随分聴き返してきた。
 これまで本気でベースをコピーした事が無かったのだが、完コピしてみると、結構難度が高いと知る。
 デビュウ時のbôaのリズム・セクションは、それまでBritish Jazz Funkの流れのバンドをやっていたらしい。ギター・オリエンテッドなバンド・サウンドだが、それを支えるグルーヴは寧ろSoul Music(R&B)なのだ。
 この曲の「やってみた/弾いてみた」系の動画は過去幾つか見たが、バンドでやっている場合は結構コードの解釈が違っている事があった。
 ベースはヴァース、コーラス共にG,B,Eを頑迷に周回しており、分数コードの分母を維持している。アルペジオ・ギター間奏のバックで控えめなソロというかオブリガートを弾いている。これもなるべく音数を絞る様な動きなので、直感的には判らずかなり聴き返した。
 テクニックとして難しい事は何もしていないが、曲のダイナミクスをシンプルな8ビートラインで弾き出している。
 ドラムはゴースト・ノートを多用しており、勢い命な太鼓ではなくセンシティヴだ。

 しかし支配的なのはやはりアコースティックとエレキのギター多重録音。だが無駄に重ねる事はせず、ハーモニクスだけを重ねるなど、無闇に分厚くする事を避けている。ディレイを掛けたペダル・スティールが、アマチュアバンドで再現する場合での鬼門になるのかもしれない。

 旧バンド・メンバーの手によるアレンジで、クァルテットの弦楽が加わるが、決して華美に楽曲を飾り立てる意図ではなく、ジャスミンのエモーショナルなヴォーカルを支える為のパートとなっている。

 
 さて今回のEPには4ヴァージョンが収録されている。これらが一枚のディスクに収められたのも今回が初めてとなる。
 Layer:A、Layer:Bと分けられた。
 普通はアルバムのボーナス・トラックとして、CDの終わり辺りに収録されていた「TV Size」がLayer:Aのど頭に来る。これには唸らされた。
 まずはこのヴァージョンが視聴者には刷り込まれたのだ。
 中村隆太郎監督がコンテを切った、あのオープニングを脳内にいとも容易く浮かべられる。

 続いては、Acoustic Versionが来た。
 このトラックの初出は多分、文化庁メディア芸術賞受賞記念でリリースされた「Tall Snake EP」だと思う。デビュウ・アルバム収録時よりも後に録音されたものだ。恐らく、日本のアニメの主題歌になったから録音された筈だ。
 元々オリジナルの「Duvet」も、かなりアコースティックなサウンドなので、このヴァージョンは僅かにテンポを落としたドラムレス版というのが実際だと思う。ペダル・スティールも入っているし、途中からベースも入るので、全くのアンプラグドではない。


 盤面をひっくり返すとLayer:B。
 ここで来る「Cyberia Remix」。本編の2nd Unit Music担当だった竹本晃氏と共に、近田和生氏=JJ役にして本業DJであるWASEI "JJ" CHIKADAによる大胆なリミックス。
 オリジナルのマルチトラック音源を正規に取り寄せて作られているのでクォリティが圧倒的だ。
 また、オリジナルの音源に入っていたジャスミンの仮歌なのか、本来は聴かせない筈のウィスパー・ヴォイスがフィーチュアされていて、「Cyberia Mix」リリース当時から驚いていた。
 ロシア風というのか、舌を巻く発音でウィスパーで歌うところにはゾクゾクさせられる。
 
 そして、今回のレコードで私が最も感銘を受けたのが、盛り上がりきって終わる「Cyberia Remix」から直結ですかさず、「Duvet」のオリジナル・ヴァージョンが切り込む様に、しかし静謐に始まるところだ。
 このマスターのエディットにはスタンディング・オヴェーションをしたい。

 今も全く「古い」と感じさせない、Cyberia Remixから、オーガニックなオリジナルへの流れは、このレコードが単なる「リリース」なのではなく、「Duvet」を鑑賞する新しい体験をさせてくれるメディアとして提供されたものなのだ、とはっきりと判らせてくれる。


 今はアナログのプレイヤーを持っている人は余程物持ちが良い人かマニアかもしれない。しかしヴァイナル(レコード)のプレス数は国内でも今尚増加をしているのだそうで、カセット・テープなどと違い今も現役なメディアだ。流石にDJプレイでアナログのターンテーブルを回す人は少ないのだろうが、スクラッチ用に一枚、保存用に一枚。

 この限定プレスのシングルが瞬く間に売り切れたなら、来年以降にアレとかがまさかの再リリースがあったりするかもしれない。

 

調査中間報告 Word of Mouth

 

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 夏のクラブサイベリア、冬のクラブサイベリア大阪と、リアルに「今、lainに強い関心を抱く人々」に触れあう機会があり、その度に放送時の視聴者層よりも若い事に驚いてきた。
 作品自体が視聴者それぞれ異なる受け止め方をされる様な作りになっているのだから、それは視聴者層もそれぞれだ、と思いつつ20年を過ごしてきたが、ちょうど放送20周年という節目なのだし、実際のところどうなのだろうという好奇心が強まった。
 そこで簡単なWEBアンケートをGoogle Driveに設置してから一週間が経った。

 告知は私のアカウントと、ライター・廣田恵介さん(設置したのは彼からインタヴュウを受けた日の夜だった。インタヴュウはややして公開される予定)Facebookアカウントからのみ。今、Twitterなどでlainについて関心が強い人に限定されている。従って何らかの統計的な価値はあまりないとは思う。しかし概要は何となく知る事が出来た。

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 今は回答すると、それまでの回答結果を見られる設定にしてあるが、最初に設置した時はこの設定に気づかなかった。
 結果はこのリンクから見られる。

docs.google.com


 全ての回答はGoogle Spread Sheetに書き出されており、記入されたコメントはこのリンクで見られる。

docs.google.com


 設置後一週間で700越の回答結果。


 設問1「あなたはリアタイ勢(リアルタイムで見ていた)か」

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 結果は安定して1/4程度がリアタイ勢で、残りは後にアニメの存在を知った人々という事になる。


 設問2「あなたの今の年齢は」

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 20、30、40歳ちょうどの人はどうすればいいんだという抜けた設問にしてしまい申し訳なく思っている。どちらかに入れてくれたのだろうとは思うが。

 にしても驚くのが、2/3が30歳未満であり、10代が20%を越えている事。
 私は30~50代がコアになっていると思い込んでいた。
 10年以上前には既に懐アニ(5ちゃんねるの板名。懐かしのアニメ)の範疇となっていた「lain」は、徐々には忘れ去られ、言及する人も消えていくのだろうと漠然と思っていたのだけれど、そうではなかった。
 配信などで今も見られ易い状況になっているのだから当然なのかもしれない。しかしふた昔も前のマイナーなアニメなのだ。
 今の若者が見て「古っ!」と切り捨てられないでいるのは、純粋に映像作品としての力があるのだろうと受けとめている。


 設問3「あなたは日本人か」

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 これは一時期、海外勢の方が僅かに上回る時間帯もあったのだが、若干日本勢優位で推移している。

 海外、特に英語圏での受容のされ方については、Twitterアカウントの方では触れた事があるのだが、本ブログではまだ記述し損ねていた、こちらのブログに詳述されており、「そんな事になっていたのか」と驚嘆した。

toshinoukyouko.hatenablog.com
 この4chan(英語版ふたばちゃんねる)発祥のムーヴメントは、2014年頃からの流れで、ここでの中心人物達はいずれも20代の若者だった。


 しかし、では非英語圏はどうなのか。
 私が知る限り、声を吹き替えたのは英語版のみで、フランス、スペイン、ドイツ語などの字幕版が正規にリリースされた筈だ。

【追記】韓国では吹き替えたものが2000年に放送されたそうだ。

 

 スプレッド・シートを最後までスクロールダウンすると、国別のグラフがリアルタイムで見られる。

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 国を自己記入式にしてしまった為、様々な書かれ方をしていたのを、私が手動で書き換えて、やっと傾向を見出せた。

 一位は当然ながらアメリカ。
 二位は急激に伸びたロシア。vkというロシアのコミュニティSNSで拡散された様だ。
 そして三位がメキシコ。アルゼンチン、チリなどの国も見られ、南米が強い。
 これは「デジモン」の受容のされ方も似た傾向にある気がしている。アクティヴなデジモン・ファンは南米在住者が多いのだ。
 欧州、北欧と、数は少ないものの広がりを実感出来る。
 一方、韓国や中国は思ったよりも少ない。

 設問4「どうやって作品を知ったか」f:id:yamaki_nyx:20181213003308p:plain

 ネット関係が多い、というのが第一印象。書かれ方はそれぞれだが、何となく自力嗅覚で見つけた人と並ぶ程に、「口伝え」"Word of Mouth"で他者から薦められた人が多い様だ。
 大掛かりな商業的宣伝など無かった作品にとっては、この広まり方が理想なのは言うまでもない。ある種の「カルト」化を正しく果たしたのだと言っても良いだろう。

 余談であるが、Weather Reportを脱退したJaco Pastoriusソロ・プロジェクトとして集めたスーパースター・バンドが-Word of Mouth-という名称だった。


 設問6「どうやって観たか」

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 本稿執筆時点近くになって、YouTubeでの視聴層が増えた。正規に観られない(発売/配信されていない)エリアの人なのだろうと思っておく。

 


 設問5「どの点が好きか」

f:id:yamaki_nyx:20181213003417p:plain 長文は、スプレッド・シートのセルをクリックすれば全文を読める。スマートに閲覧出来る方法を探したが、これというものが見当たらず、スプレッド・シート状態で読んで貰うしかない。

 ロジカルに読む人、雰囲気を愉しむ人などそれぞれ。
 ここで傾向などを見出そうとは思わない。


 回答してくれた方々には心より御礼を申し上げる。
 尚、このアンケートは受付を終了する理由がないので、このまま設置しておく。
 まだ回答されていない人はこちらから。

docs.google.com

 

serial experiments lain」は、プレイステーション版がオフィシャルには再販される事が無いのと同じく、アニメ・シリーズも中村隆太郎監督が亡くなっている今、その後も無い。
 完全に完結してしまっている作品についての「この後」を考えても無意味かとは思う。
 しかし20周年を迎えて、ファン・イヴェントが開催されたり、関連商品が再販、或いは新規な商品(これについてはまた後日)が発売され、良い20年だったと思える。

 

 

 

クラブサイベリア Layer_2 in Osaka

 

 11月26日、プレイステーション用ソフト「serial experiments lain」が発売20周年を迎えた。
 12月1日、再びシオドア()氏が中心になって呼び掛け、シオドア氏の地元大阪で、ゲーム版「lain」をフィーチュアしたファン・イヴェント「クラブサイベリア Layer_2」が開催された。
 夏のクラブサイベリアは200人規模のクラブで開催されたが、今回は100人規模の小さなライヴ・スペースになる。
 
 シオドア氏を始めとしたサイベリア開催陣は、夏のイヴェントで20年分の全てのエネルギーを注ぎ込んで、直後はもう二度とやらないとまで一旦は言っていたのだが、ややして「大阪でもやってみようかな」という様なツィートがあったので、「交通費持ちで私も行きますよ」とは声を掛けてあった。

 暫くして大阪イヴェントの陣容が、WASEI "JJ" CHIKADA(近田和生氏/JJ役声優で現役DJ)と共同開催という形で決定された。
 私が参加しようと思った理由はシンプルで、夏のサイベリア開催の為に何度も東京へ遠征しては関東のファンとミーティングを重ね、入念に企画を練り上げてくれた関西ファンへ、御礼をすべきだろうと思ったからだった。

 11月中頃まで、私は仕事に忙殺されており、どう行こうかも決めていなかったのだが、その時点で安い航空券も取れなそうだった。
 迷ったのだが、1人車で行く事にした。
 1人で壇上に上がっても手持ち無沙汰だろうと、ベースを持っていく事にしたからだ。
 小さいアンプも必要だった。

 


 Yahooカーナビで見ると6時間程度で行けるという。しかしこれは当然ながら、休憩時間を含まない。5時到着予定で出発したが、着いたのは6時を少し回った頃になる。

 ずっと若い頃は京都へは幾度か車で行っているのだが、ここ20年はロング・ドライブなどしていなかった。
 2012年に開通したという新東名高速新名神高速という道をカーナビが選んだので素直にそれを走った。140km通行を想定した道路設計でカーブが少なく、トンネルが多い。海は殆ど見えず、ただひたすら山の中を走る様なルートで、当然ながらサービス・エリアも東名で馴染みのあるそれとは名前が同じなだけで全く異なる施設。
 今の私の車は親から相続した小型車で、120km/h以上は踏みたくない足回りとエンジン。また風にも弱い。という事でスローペースで行ったのも遅刻に繋がってしまった。
 ただこの車は12インチのキャビネットも積めるくらい積載量はある。今回はPhil Jones Bassの部屋弾き用アンプにしたが。


 今回は日本橋にあるギルドという場所。普段はアニソンや地下アイドル系の催しが開催されている様だ。
 大阪は19年前、安倍君と上田P、「青の6号」の村田蓮爾さんらと合同でイヴェントに出た以来。つまり私の人生で2回の大阪訪問はどちらも「lain」絡みだという事に。

 3時前には開場し、オフ会的に始まっていた。

 


 夏のサイベリア、コミケ後のTEXHNOLYZEオフ会同様、ラガードーさんが記事を書いている。

lagado.seesaa.net

 今回は「ゲーム版推し」傾向な企画と位置づけられており、実機プレイ体験などは夏よりも多くの人が触った様だ。
 ファンアートも多く飾られていたのは夏と同じく。

 


 本来なら私の登壇、最後にJJのDJプレイという進行だったのだが、私の到着が遅れた為にJJに先に出演して戴いて恐縮した。しかしじっくりと裏で愉しめたし、長時間運転の疲労も少し軽減出来たので有り難かった。

 

 

 ゲームには全く関係無いが、アニメの方では大きなインスパイア元になったJaco Pastoriusについては、このエントリでも述べているのだが、どういう奏法をしていたのかを、実際に観て貰おうというのが、ベースを持ち出した動機だった。
 フレットレス・ベースをライヴで使ったのは過去2回くらいしかない。今回はジャコ風の音を出す事に特化するので、ペダルボードもコンプレッサー+コーラスのみ(あとチューナーとプリアンプ)。


 ジャコの奏法全てを私が弾ける筈もないのだが、判り易いハーモニクス導入奏法を簡単に説明し、ナチュラル・ハーモニクスを使ったソロ曲「Amerika」と、人工ハーモニクスを使った「Contenuum」の2曲を披露した。

 
 あああと「Duvet」も弾けば良かったなぁと後で後悔。

 トークはシオドア氏とのやりとりで、充分にやれたかなと思うが、質疑応答が出来なかった。

 さて、本題であるゲーム版についてだが、4Gamer記事にもある様にオフィシャルが再リリースする事は「無い」と既に断言されている。
 なので新たに、もしくは再びプレイしたいと思うなら、ファン自ら行動を起こす以外には無い。言うまでも無くこれは大変な困難の道で、二の足を踏む人は多いだろう。
 しかし夏・冬サイベリアに寄せられたファンアート、携帯NAVIや不揮発性メモリ実機を作り出す人など、クリエイティヴな人がファンの中に多いのは既に明らかで、何らかの道が開けるのではないか、とは無責任ながら思っている。

 
 最後にJJ Mix版「遠い叫び」「Duvet」で締め……られず、シオドア氏が長い後説をして、大阪の陣は終わった。

 


 撤収している間にサインをしたり、

 ドールを戴いたり。


 誘われたのだが二次会を固辞して、私はすぐ近くの新しいホテル(Google Mapで見つけて予約)にチェック・イン。
 ホテルがサービスで出していたミニ・サイズの担々麺を夕食にして、早々に眠った。

 このホテルは中国か韓国か、ともかく外資らしく、泊まり客は殆どが外国人。
 翌朝、朝食を食べようとカフェへ降りると、話しかけられ、最初はてっきり外国人かと思ってしまったが、実は同宿だったPlayTrack44さん(不揮発性メモリを作った)だった。
 言わばリアタイ勢で、放映時の事などを話しながらゆっくり朝食を食べた。


 もう帰るだけなのだが、背中が痛みだしていたので、ドラッグストアで湿布を買おうと、通天閣辺りまで歩いた。この辺りもすっかり外国人ばかりの風景。

 

 帰りのルートも同じだったのだが、休憩を多めにしたのと、日曜の夕方に掛けてだとやはり渋滞が起こって、出発から帰宅まで9時間も掛かってしまった。


serial experiments lain」の20周年の年である2018年、ファンの人と直接触れあえる機会が2回もあったのは幸せな事だった。

 それにしてもファン層が若い。リアル・イヴェントに来るという層だからかもしれないが、後になって知った人が多そうだ。
 トークの時に「どうして知ったのか、今何歳なのかなどを問い詰めたい」と漏らしたのだが、それを実際に調べようと思い立ってこういうアンケートを、深い思慮なく公開した。

docs.google.com


 未回答の方は是非。
 このアンケートについてはエントリを改める。

 

 

 

 

 

 

 

中原順志氏と連絡がつく

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 凄いな4Gamer記事の注目度は(と言ってもこの記事を面白がったのはヴェテラン・ゲーマーだろうけれど)。

 PS版「serial experiments lain」のディレクター、中原順志氏とはここ10年近く連絡がとれていなかったのだけれど、記事を読んだ人が当人に伝えてくれて、久しぶりに連絡をくれた。
 忙しく仕事をしているそうで何より。

 で、幾つか記事に訂正が入った。

 

> ATR人工知能を研究していたところにお邪魔して
> サインしてもらったのはトマス・S・レイ氏(Tierraという 人工生命プログラム の人 )です。
> アランケイでは有りません。

 

 だったそうです。
 考えると、NOëL絡みで話をという事なら成る程こちらが関係がありそう。
 20年前の話なので、みんな記憶が錯綜しているのは致し方ないところ。

 Tierraだと、「lain」よりはデジモンテイマーズな方向性で親和性がある話なので、私個人的にはこちらも興味深いなぁと。

 まあ実際の「lain」の開発時のあれこれも、色々と互いの記憶が違っている模様。
 20年経てば、そりや記憶も風化するし、立場の違いで認識が異なる事もあるよなぁ。

 てことで、また中原氏を交えて、(阿鼻叫喚怒号の飛び交うやもしれない)同窓会をやってみたい様な、怖い様な……。

 中原氏は「ですぺら」最初期の、まだ中村隆太郎監督が参加していた時期には1,2回会っていたし、今またちょっと企画がスタック中なんだけども、また再始動した時には相談したいと思っている。