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serial experiments lain 20th Anniversary Blog

Layer:06 KIDS - lain in wonderland

 

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 部屋に帰ってきた玲音は、既に「ワイヤードのレイン」の様に気が強い顔になっている。

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 乱暴にリップを拭い、「Hello NAVI」「Connect」という通過儀礼を行うが、これまでは単にインターフェイスとの対話だったのに対し、ここからは玲音の意識変容を経てワイヤードへメタファライズして侵入する為のものとなる。

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 このメタファライズという言葉は「ありす in Cyberland」のダイヴ・インした状態の呼称として使ったのが初出だった。デジタイズといった物理的な言葉ではないものを選んだのだと思う。「デジモンテイマーズ」でも幾度か用いたが、こちらでは子どもに判り易く「肉体がデータ化した」という言い方をした方が多かった。

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 さて、いよいよワイヤード内で自律的に行動し始める玲音。

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 完全な黒バックに、鈍色の1本の「道」という抽象的な表現は完全にアナログ・アニメーション。

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 「口」を出してくる「チェシャ猫」(『不思議の国のアリス』由来)気取りのネット・ユーザへの玲音の言葉はきつい。だがまだ玲音は、自分が異なる性格が切り替わる事に自覚的ではない。
 この場面で、デジタル効果もCGも全く使わなかった中村隆太郎監督の直感的選択は本当に凄いと思う。

「スイッチが入った」状態の玲音は、チェシャ猫との無駄な会話をしている寸暇も惜しんですぐさま自分が求めていた情報を呼び出す。

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 子ども達の奇妙な遊びが何に由来しているのか――
 それはある科学者の実験に関係がある事を突き止める。
 ホジスン教授――

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 その静止画像が変な繋ぎで2カット連続しているのは、中CMを挟んだA,Bパートの切れ目が直結しているからで、これはおかしい演出ではない。

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 既にホスピスで、生命の灯が消えようとしているらしいホジスン教授の許に、玲音はテレポートする(ワイヤード内なので距離は無い)。
 生命の灯が消えようとしているが、彼にとっては永遠の様に長い時間、黄昏の空中庭園でずっと自分の人生を訓誨している。

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 ホジスンという名称は「不思議の国のアリス」作者、ルイス・キャロルの本名であるチャールズ・ドジスンからの発想だが、やはり怪奇小説作家の名前からの部分も大きい。昔、佐野史郎さんと、「オカルト勘平2」の時か「インスマスを覆う影」の時か覚えていないが話している時、東宝映画「マタンゴ」の原作者を、「ウィリアム・ホープ・ホジスンは――」と口にされたのを聞いて強い印象に残っていた。

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 玲音が生々しい姿にメタファライズしている事に驚いているが、ホジスン教授も全く動けないだけでリアルな姿になっている。恐らくリアル・ワールドの肉体は生命維持装置に繋がれ意識は無いのだろう。
 他に人が立っている様に見えるが、空中庭園に飾られた石像だ。

 

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 玲音は教授の状態を判りながら、詰問をする。現在リアル・ワールドの子ども達の間で流行っている「遊び」が、かつてホジスン教授が行った実験のデータが利用されているところまで、玲音は判っていた。しかし、その実験は検索でも辿れない。

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