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serial experiments lain 20th Anniversary Blog

bôa をもっと聴こう

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 Wikipedia日本版の記述によると、「Duvet」がシングルでその後に「The Race of a Thousand Camels」が日本のみ(ポリスター)で発売されたとあるのだが、これが私の認識と異なる。
 前エントリに書いた様に、我々はアルバム(サンプル盤ではあったが)からあの曲を選択していた。CDシングルは「serial experiments lain」の主題曲としてのリリースだから、アルバムが出たのがその後だったのかもしれない。

 このファースト・アルバムは日本のみでリリースされ、現在は中古盤が流通するのみだが、bôaは2000年にPioneer(後Geneon)と契約し、2001年になって「Twilight」を世界デビュウ盤としてリリースする。

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 この「Twilight」は「The Race~」の実質的なリイシューで、曲順が若干異なり「Duvet」から始まる他、「Duvet」のアコースティック・ヴァージョンと「Little Miss」「Drinking」の2曲が加わっている。
「The Race~」は1998年の録音であり、実に3年以上も経っていた。

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serial experiments lain」放送後に日本企画のミニアルバムがリリースされている文化庁メディア芸術祭優秀賞受賞記念という気恥ずかしい帯がついていた)。「Tall Snake EP」には「Duvet」は前述のアコースティック版、更に「Duvet (DJ Wasei's Cyberia Mix)」の3種と、更に2曲が加わる。「Two Steps」はスティーヴがヴォーカルをとる曲だが、これだけが「Twilight」には加わっていない。「Drinking」は収められている。

「Twilight」と2005年にリリースされた「Get There」は共にAmazonダウンロード販売されている現行商品。ファースト・アルバム+あれこれの「Twilight」は是非。

 元々ファンクバンドだった様だが、時期的にBritish Jazz Funkのムーヴメントは過ぎ去っていた。ただ、ドラマーは代わったものの、随所にグルーヴィーさは見出される。
 元々ジャスミンは1曲のコーラスのみの参加だったのが、メイン・ヴォーカルとなった時点で音楽性が我々が知るbôaのものとなる。

 徹底的にギター・オリエンテッドなバンド・サウンドで、キーボードは最小限。その代わりキーボードのポール・タレル(残念ながら逝去した)がアレンジしたカルテット編成のストリングス・セクションが極めて効果的に導入されている。
「Duvet」もストリングスの奏でる白玉や裏メロなどは曲想に不可欠な存在感がある。

 しかし楽曲の多くはギターで作られた感が強い。コードの中間音をサスティションさせて展開させる手法が頻繁に見られ、かなり特殊なコードも使われているが、技巧的というよりは不穏な和音感が目立つ。
 そうしたオケをバックに歌うジャスミンの歌メロは、インド~中近東的なエキゾチシズムを持つフレーズが頻出する。
 決してテクニカルな印象はなく(ヴォイス・トレーニングを徹底的にやった的な)、自然体という感じの歌い方なのだが、過度に感情に流されず歌詞を正確に伝え、カオティックな領域までいとも容易く辿り着く。
 書いていて矛盾に満ちた表現だと自分でも思うが、ジャスミン・ロジャースの歌はこうとしか説明しようがない。

 それにしても、幾ら最初に日本の会社と契約したからと言って、いきなりアニメの主題曲になると知った時彼らはどう思ったのだろう。
 ――と案じていたのだが、2000年のオタコンでライヴも披露したそうだし、悪くは思っていないと思いたい。

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 2005年にオリジナル作としては(やっと)2作目となる「Get There」がリリース。
 概ね前作の印象を引き継いではいるのだが、エスニック志向は更に広がってスパニッシュ的な曲があったり、あと不穏なサウンドは後退していると思った。
 しかしジャスミンの歌は相変わらず素晴らしい。