1994年頃にMacを購入し、すぐさまモデムという電話回線でネットにつなげる裝置も揃えた。しかしここからのハードルが高かった。
Mac用の通信ソフトはJtermという市販ソフトがあったのだが、この頃のネットとはインターネットではなくあくまでパソコン通信。商用BBSという大手のホストは、私が加入していたNIFTY-Serve(日商岩井と富士通が米Compu-Serveを参照モデルにして設立)かNECのPC-VAN(98ユーザはこちらが多い)、ASAHI-Netあたりがあった。
個人がある時間帯で自分の電話回線を開放する「草の根BBS」というのもあった。
私は同世代の作家・脚本家の早見慎司氏(当時は祐司氏)のところにアクセスした記憶があるくらいだが。
Niftyについては包括的な説明は省くが、いずれのパソコン通信も基本はテキスト・コマンドを打ち込んで、目的のBBSにアクセスする。まあ今ならコマンド打ち込むのも面白いのかもしれないが、当時の文系にとっては未知の言語に近しい峠だった。
しかしそこはMacコミュニティ。アクセス、ログ取りこみ、切り出し、ブラウズとそれぞれ専用のフリーウェアが開発されており、ほぼダブル・クリック操作で全てが自動化出来た。ただいずれもフリーウェア作家の好意に成り立っており、これが無ければインターネットまでの道はまだ遠かっただろう。
Niftyでは様々なカテゴリのフォーラムがあって、それぞれにはシステム・オペレータ(今のRedditで言うモデレータ)が管理する中で、節度あるコミュニケーションが行われていた。
私はTBSの2時間ドラマ「乱歩 ~妖しき女たち」(演出:吉田秋生 主演:佐野史郎 常盤貴子 床嶋佳子 小川範子 1994)の構成と脚色を担当しており、そのリアクションを知りたくて推理小説フォーラムに加盟した。※1
この頃のフォーラムは、一般のファンに交じって作家も多く実名で参加しているおおらかな時代だった。
ここで綾辻行人さんや井上雅彦さん、太田忠司さん、津原泰水さんらと知り合った。
また会員が任意で集まるクローズドのBBS(Patioと呼ばれた)を設け、そちらでは映像関係者が交流していて、角銅博之さんとはそこで知り合った(らしいのだが明確な記憶が私から欠落している)。
「ウルトラマンティガ」が放送される1996年頃になると私はほぼROM専に近い状態になって、特撮フォーラムに書かれる感想を眺めていた。
その頃にはパソコン通信も広まっており、現場スタッフも読む様になっていて、ミニチュアセットに鳥居が映る場合がままあったのを指摘する感想を受けて、三池敏夫さんがこれでもかと鳥居を入れ込むという「ライヴ感覚」が発生する。
私が担当した話数は概ね好評だったが、最終回で紛糾した事は特撮ファン間には知られている。
私は確信的にそういう結末を選んだが、拒否する特撮ファンの考えも理解していたので、「まあそうなるよな」と冷静だったが、パソコン通信上で何故そういう結末にしたかを明言は一切しなかった。
そしてその頃から、インターネットに接続が可能となる。
電話回線同士の接続ではない。世界とつながるのだ。
ただこれがまたクリック一つという訳にはいかずで、MacTCPだのPPPだのという機能拡張を入れる事を強いられ、パッケージ販売されていたNetscape Navigator(Mozilla 今のFirefox。勿論フリー配布されていたが、ネットに繋がる前に入れる必要がある訳で製品を買うか雑誌付録のCD-Romからインストールするしかなかった)でやっと、遂に接続出来たのだった。
ああこんなもん書き始めるんじゃなかった……。
lainの話にはまだ暫く戻れない。
※1「乱歩 ~妖しき女たち」はTBSオンデマンドで今も配信されている。
YouTubeだとここから。
ちなみのこのタイトル・ロゴも私がMacで作成したものがそのまま用いられている。