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serial experiments lain 20th Anniversary Blog

Alice6

 konaka.comというドメインを得てレンタルサーバでサイトを始めたのは、1996年頃だった気がするが今や明確に覚えていない。
 1994年に、弟の和哉が監督で私が脚本を書いた「Alice6」というテレビドラマがあった。今はもうないレコード会社が企画した「エリアコード・ドラマ」という枠の1シリーズ。エリア・コードというのは日本各地の市外局番の事で、地方局のみで放送された。我々は静岡のエリア・コードを割り当てられ、実際一部は静岡でも撮影した(シナリオを書く為に私一人でシナリオ・ハンティングにも行った)。放送は静岡と、新潟だけだったと記憶している。

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 6人の少女モデルが山の中のロケに集められるが、一人が消えてしまう(この消えてしまう少女の名前が四方田千砂/初出)。
 残された少女達はウサギ頭の男に翻弄され、毎回奇妙なワンダーランドを巡る――という構成にした。

 なぜ6なのかと言えば、60年代のイギリスのドラマ「プリズナー No.6」という、スパイ物をベースにしながら、毎回不条理な展開をするカルトなドラマがあって、それを目指そうという意図があったからだった。
 ドキュメンタルなバラエティ感と、極めて虚構性の高いドラマとが混在し、視聴者を混乱させる意図で楽しんで書いていたが、極めて低予算なので収録は大変だった。
 予算も大幅には越えなかった筈なのだが、結局製作会社もなくなってしまい、ビデオ・ソフト化してせめてもの補填をしたいと望んでいたが、そもそものレコード会社すら無くなってしまい、願いは叶う事が無かった。
 まだレコード会社が存在した頃、こういう野心的なシリーズがあったという事をネットに記録しておきたい――というのがkonaka.comを設置した最初の動機であった。
 尚、「Alice6」はデジタル化して全話をYouTubeにアップしてある。

Alice6 Drama Archive

 話作りに制約が全く無かったので、本当に好き勝手書けて楽だったかと言えばそんな事は無く、各話のシナリオはフラフラになるまで絞りきって順次書いていた。
 終盤のシナリオを上げた時、レコード会社の若い女性アシスタント・プロデューサーが「凄く楽しみにしていてたけど、どういう終わりになるのかハラハラしていた。でもとても良いエンディングだったので泣けた」(意訳)的な事を言われて、ちょっとビックリした事を思い出す。
 ああ、観客はすぐ近くにいたのだなと。

 真冬なのに薄い羽衣衣装で静岡の浜辺で戯れるという辛い撮影を、ヒロイン達に強いてしまったが、ほぼ女優経験のないモデルの女の子達の、ほんの僅かな時期の生命感を映像に記録出来た作品だと思っている。
 
 90年代末になるとアニメや特撮の仕事が激増し、konaka.comは言わば作家によるサブテクスト、ライナーノーツ的な記録保管庫という様相にシフトしコンテンツを倍加させていった。
 当時のサーバの容量を越えそうだったので、その時契約していたプロバイダのサーバに幾つかのコンテンツを分散させていたのだが、これが失策だった。
「Alice6」や「ふしぎ魔法ファンファンファーマシィー」等一部のコンテンツはそのプロバイダを解約してしまった為に、デッドリンクになってしまった。
(ファンファンについてはしかし有り難い事に、どなたかがWeb Archiveにミラーを作成してくれており、Wikipediaにはそのリンクがある)

 ローカルにとってあったバックアップで復元する事も不可能だった。
 それもこれもClassic MacOS環境が霧散したからだ。家捜しすれば当時のバックアップのMOがある筈だが、それを読める環境がもう無い。

 私にとって、少女(達)が不可思議な世界で彷徨う様な物語構造は「不思議の国のアリス」(元々のタイトルは "Alice in Underground World" だった)であり、何らかの超古代の強大なる力を持つ存在があるという観念はクトゥルー神話に連なるのだから、言及するのは極めて自然な事だった。これらについては本稿の趣旨ではないので詳述はしないのだが、「serial experiments lain」シリーズ版のキャラクター「ありす」については、いずれきちんと記したいと思っている。