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serial experiments lain 20th Anniversary Blog

Layer:01 - Supplement


 1話のAct:3は些か書き急ぎ過ぎてしまった。
 1話のシナリオについて書き忘れた事を。

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 人身事故で急制動を掛ける電車の描写が引きのまま1カットで描かれていて、これがまた凄いカットだった。

 

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 シナリオでは「白地にビットマップ・フォント」で短いテキストを度々インサートする箇所を設けている。
 ビットマップ・フォント(ドットで形作るフォント/ファミコン文字の様な)という指定は華麗にスルーされて、TrueTypeで鮮やかなテクスチュアを伴って描かれる。デジタル撮影の先駆け的存在のレアトリックによるもので、以降中村隆太郎作品にレアトリックは不可欠な存在となる。

 こういうテキスト文をドラマ中にカットインさせる手法は、Jホラーの始祖的な作品の一つとなる、私が脚本を手掛けた実話ホラーの手法の流用なのだが、入れる意図はJホラーとは全く異なっていた。
 Jホラーは、どれだけドキュメンタリに近づけるかという事で怖さを担保させるのが基調であり、ドキュメンタリの話法を取り込んで端的に情報を観客に提示する意味合いだった。
 しかし「lain」初期話数では、情報の提示というより寧ろその前後の場面を断ち切って、情緒的に雰囲気で観られない様にする為の意図だった。
 メッセージ的には、四方田千砂が鴎華学園中学の生徒達に送信した(本当に千砂が送ったのかどうかは不明なのだが)テキストの断片を提示している事が次第に明らかになってくる。

 インターネット初期のコミュニケーションは専らテキストによるものだったのだ。


 それと、これには1話はアニメとして総力戦的に高いクォリティの作画を期待される筈なので、少しでも作画尺を軽減させておきたいという、お節介だが貧乏性的な私の配慮でもあった。特異な語り口になるなら、現場にとっても作品的にも互いに利益があるだろうという。

 

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 千砂からの玲音へのメールは最終的には「早くワイヤードに来て」と誘う文言に集約され、玲音を追い詰めていく。