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serial experiments lain 20th Anniversary Blog

ネットがもたらしたコミュニケーションと自己表現


 さて1990年代末から2000年代初頭にかけてのハードウェアについてはざっと述べてきた訳だが、ソフト面を振り返る。
 パソコン通信時代はBBSが基本だった事は先に述べたが、電子メールも今のそれとほぼ同質なものが90年代には使われていた。
 ただ、各商用BBS内のアカウント同士は簡単(だし無料)だったが、異なるホスト間となると若干の問題があった。
 やはりインターネット時代に入り、一つのメール・アドレスがユニークなアカウントとなるメール・プロトコルが行き渡ってからが本当の時代だと言えよう。
 Mac用メール・クライアントとしてはEudoraが初期からよく使われており、私も90年代半ばはこれを使用していた。Windows版も出ていた(が、やはりMicrosoftOutlook Expressを使うユーザが多かった)
 90年代末にはPostPetがリリースされ、女性から圧倒的な支持を得たりした。ファンシーな仮想キャラクター(AIの様に振る舞う)はPostPetが嚆矢と言えよう。
 メールの着信や巡回サイトの更新を知らせるデスクトップ・マスコット「何か」も人工無能を搭載するAI的な振る舞いをして、仮想的な2次元キャラクターの実存をユーザに感じさせ始めるのだが、これは些か横道。

 この頃のネット・コミュニケーションは、メール、ウェブサイト以外にNewsGroupというものがあって、各国様々なカテゴリに細分化してパソコン通信のBBS的に用いられていた。メーリング・リストなのだが、既にここでも炎上現象は起こっていた。

 チャットというサービスもプロバイダが早くから設置していたが、これは今もオンライン・ゲーム・ユーザには親しみがあるだろう。

 そして「ホームページ」を作る時代が来る。
 ユーザが自分自身の紹介(汎用)をネットに置く文化がスタートする。
 HTMLというテキストに固有のタグをつける事で、文字の種類やサイズを変えたり、ハイパーリンクを貼ったりする事が出来るのだが、余程の慣れた人でないと専用のHTMLエディタ(ホームページ作成ソフト)を購入して書く必要があった。
 更にそれをネットに公開する為には、ファイル転送プロトコルftpを実施するソフトが別途に必要だった(後年には全てを統合したソフトも登場したが)。

 つまり、単に文章を書くばかりではなく、こういった手続きを苦にしない人が、ホームページ時代を築いたのだと言えよう。
 後のWeblog→Blog時代にはこうした手続きが要らず、文字入力に専念出来る分楽にはなったが、Blogはログ、記録なのであって、コンテンツは全て書いた順番の新しいものからしか読めなくなる(勿論タグをつけるなどの手段はあるのだが)。
 ホームページが良かったのは、「トップページ」が目次/索引(=index)となっており、読みたいコンテンツへのアクセスが容易だったからだ。

 ウェブのディレクトリ(フォルダ)にブラウザでアクセスすると、自動的にindex.htmlという「最初にアクセスするファイル」が開く。
 ウェブ上に置かれたテキストは、凡てリンクで繋がるという思想こそがハイパーテキストの理念だった。
 尤も、ウェブブラウザ上のちょっとした操作で、Googleという自動生成リンク集に容易に辿れるのだから、事実上その理念は成立してはいる。

 本ブログを置いている「はてなブログ」は頻出する用語などは自動的にリンクが生成されているのだが、そのリンク先があまり要領を得てない気がしないでもない。

 ホームページは、全体構造を設計しながら、或いは拡張させながらもルートで読み手も書き手も把握出来るという面でロジカルなものだった。Blog時代以降の現在は、構造性がすっかり無くなってしまったと今尚感じている。

 さてこのホームページの時代になって、特撮やアニメの感想などを書く人が現れ、一方で新しもの好きな作り手が自身のサイトであれこれ書き始める。
 「太古のホームページってこんなだったよな(笑)」という典型を見たければ、おあつらえ向きのサンプルがある。
konaka.com Alice6 特殊脚本家・小中千昭のWeb Site

 これについては次回また。