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serial experiments lain 20th Anniversary Blog

Layer:01 Weird - Aban-title


 という事で各話回顧に入るのだが、1話はあれこれ説明事も多く、到底1エントリで書ける分量ではない(ので分記する)

 

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 オープニングの入る直前、ノイズから「プレゼント・デイ、プレゼント・タイム」というタイトルが入る。
 シナリオではあくまでト書きの扱いで、どういうスタッフが読むのかは判らないので明確にこのシリーズは近未来ではなく「現代」です、というマニフェストのつもりで記していた。
 これをネイティヴ・スピーカーにハイテンションで言わせた挙げ句、高らかに笑い声まで付加され仰天した。
 当初は「悪趣味だなぁ」という印象だったのだが、短い「素」(す)があって、bôaの「Duvet」が始まり、あのオープニングが流れると、何やらまとまり感が生まれる。

 

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 アニメのオープニングは通常1分30秒で、楽曲によってはこのサイズに編集するのに苦心惨憺するものだ。

lain」OPの、最後のグリーン地の玲音のバスト・ショットは実は提供バックのカウントに入る(タイムシート的には)。
 ソフト版だとあたかもオープニングのラストカットに見えているが。

 

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 かつてならマルチ・プレーン撮影をしなければ得られなかった、「レイヤード・ショット」。デジタルを援用出来る、セル・アニメ末期ならではのショット。

 

 オープニングのコンテを中村隆太郎監督がどの時制で描かれたのか記憶にないのだが、玲音が生活空間のモニタ内にいて、玲音が歩く時には町に他の誰もいない――という構図は全く最終回の着地点だった。
 私はそこまで言及しなかったが、玲音の居る世界では時がリニアに流れず、風に飛ばされた帽子は静止している。

 

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 そしてサブタイトルは一文字ずつ中原順志君が毎回動かしていた。読み上げはMcInTalkの"Whisper"。
 第一話の「Weird」は、「無気味な」「奇妙な」というニュアンス。
 シリーズで「ネット」という言葉を封じて「Wired」に統一したのと、この1話サブタイとどちらを先に考えたのか、もう思い出せない。

 

 先にシナリオ執筆を大きく2期に分けたと述べていたが、そこには私の踏ん切りの悪さというのも介在していた。
 正面きって「サイバー物です」などと言い張れる様なものを作れるとは思っていなかったし、それをやりたいとも思わなかった。
 しかし、人と人、後には人と物が、非物理的に(いや実は物理的なのだが)結びついていくという事象そのものを主題とする物語をやりたい。
「ありす in Cyberland」ではすぐさま「ダイヴ・イン」してネット内世界を描写したが、それは近未来的な設定だから私でも書けた。
 
 極めて現実的な、「リアル」な質感の中でそれを表現するなら、極力「Wired内描写」を避け続け、現実世界の方にWiredが侵食してくる構図で描いていくしかない。

 だがいつまでも「内描写」を忌避してもいられまい。そこは監督が決まってから相談して、何が可能で何が不可能か、どんな飛び道具、手段が考えつけるかを相談しようと「棚上げ」にしていたのだった。

 実際には、隆太郎さんから「こうすれば出来るよ」的なアドヴァイスは全く得られず、じゃあもう無茶な事まで書いちゃいますよ、後で相談しましょうね的な進め方にはなるのだが。

 

 と、1話本編にもまだ入れず……。