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serial experiments lain 20th Anniversary Blog

Layer:10 Love - Father's farewell words

 

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「ただいま」
 ドアを開けて、身体を少し回して入ってくる玲音のアニメーションがこれまたリアル。こういう描写が入るだけで、この映像作品が「生きた人間」を描いていると伝えられる。

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 岩倉家は荒廃している。
 玲音がモラトリアム状態に陥っている間に、既にこの家から家族はいなくなっているのだが、学校から帰れば元に戻っているかもしれない、という無根拠な期待を微かに抱いていた。

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 しかし――、植物は枯れて果てている。

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 美香の部屋には、まだ美香の意識が少し残留している様だ。一瞬ノイズの様に姿を見せる。

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 学校からここまで、ダイアローグ無しのサイレント描写。BGMは隆太郎さんが「ミニマル」というキーワードで指定していたと思う。
 散らかったままの美香の服を畳もうと――

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 人の気配に振り向くと――

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 もういないと思っていた「パパ」=康雄が立っていた。

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 しかし康雄は敬語で玲音に別れの言葉を告げ始める。

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「もう御存知なのでしょう。私達の仕事は終わったんです。
 短い間でしたが、大したお世話も出来ずで――」

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 玲音は絶句する。

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 康雄は玲音がもう、いや、最初から「自由」だったと言う。
 彼(橘総研で、英利の管理者だったのかもしれない)には、別れを言う許可は与えられていないにも関わらず、ここに来たのだ。

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「私はあなたが好きだった。私には、あなたという存在が羨ましかったのかもしれません。じゃ」

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 そう告げると、康雄は背を向け階段を下りて行く。

「待って! あたしを一人にしないで」

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 康雄は振り向かずに答える。

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「一人? 一人じゃないですよ。ワイヤードにコネクトすれば、誰もがあなたを迎えてくれる。あなたはそういう存在だったのです、そもそもあなたは」

 

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 寂寥感に苛まれる玲音。