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serial experiments lain 20th Anniversary Blog

Layer:10 Love - Psychodrama

 

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 アヴァンはヴォイス・オーヴァーなし。SEは更に混沌化。

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 コンテ:佐藤卓哉 演出:村田雅彦 作画監督:菅井嘉浩

 

 

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 このシリーズでは初めて前話からの直結で始まる。

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「たった一つの真実、神さま」
「そう、僕だよ、玲音」

 完全に舞台上での対話劇。物語の本質に触れる内容なので、場面分割や何かの動きと平行させるなどという装飾を一切せずに対話のみで描くという意図だった。
 ここまで焦らしたのだから充分だ。

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 しかし、では普通にやりとりして会話で情報を開示するというのも面白くない。
 ここでは「サイコドラマ」を援用し、玲音と英利は互いの立場を入れ替えて、相手の考えを読み合う芝居とした。

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 こういう描写は、「ヘザーズ/ベロニカの熱い日」(1988/脚本:ダニエル・ウォーターズ 監督:マイケル:レーマンのコンビは、その後「ハドソン・ホーク」で失墜してしまう)という大好きな映画の中にあって、この時は「面白い話法だな」という認識だったのだが、その後筒井康隆の小説「夢の木坂分岐点」で、こういう役割交代は精神療法の技法の一つなのだと知って、心理療法をあれこれと調べた。

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 サイコドラマ精神科医ヤコブモレノとその妻の心理療法士が考案したもので、本来はグループでロール・プレイを行い、観客もいる中で演じる事で、自分を内観する視点を見出させるもの。このトレーニング課程にて、2人が互いに役割を入れ替わる役割交替法というものがあって、それに則った作劇をしている。

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 本作のコンテは佐藤卓哉氏で、最初に上がってきたコンテは台詞が全部ノーマルに(玲音が玲音の台詞)変わっていたのだが、中村隆太郎監督が戻した。
 ただ、佐藤卓哉氏のコンテは実に味わいのあるもので、我々(メイン・スタッフ)は皆魅了された。後に「NieA_7」から安倍吉俊君と組む事になる。

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 この初めての対面で、改めてワイヤードは「死者の世界」と重ねられた上で、英利は既に肉体が死んでいる事が強調される。つまり前話のドキュメンタリを、玲音は視聴者と同じく受容していた。

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 ではこの神を騙る英利は――?

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 玲音は英利の思考を読んで、英利が第7世代プロトコルに自身の思考、履歴、記録、情緒をデータ化して高いフェイズに送り込んでいたと悟る。

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 ワイヤードで一般のユーザには匿名=アノニマスな存在として、彼は永遠に生き続けられる。だが、英利はそれだけでは不足だった。
 自分は実質的には神なのだから、そう在るべき。神が神足るには、崇める者が必要――。

 玲音はナイツを作ったのは英利だと悟る。

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「君にはもう肉体なんか必要ないんだよ」

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 そう言って姿を消す英利。

 

 

 

ジャコのボディ・ペインティング

 

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 ジャコ・パストリアスが図抜けた才能あるベーシストとして知られ始めたのが1970年代終盤。Weather Reportに加入し、スタジオ・アルバム4~5枚の録音と、数多くのツアーで世界を席巻して、脱退するまでが1981年。
 自分のビッグバンドを立ち上げ、日本を含めたツアーを行ったのが1982年。ここまでがジャコの最高潮期だった。
 僅か5年程度の期間なのだ。

 もの凄いテクニックを持っていたが、全盛期であってもその才能をフルに発揮出来たライヴばかりでもなかった。
 Weather時代、ジャコのソロ・パート(他のメンバーはステージから去る)は、ジョー・ザヴィヌル(バンド・マスター/キーボード)の真似をしてテープレコーダーのオーケストラを流してのプレイ、いきなりアンプをオーヴァー・ドライヴにしてJimi Hendrix "Purple Haze", Sly & The Family Stone "I Want To Take You Higher"の一節ばかり、これらは亡くなる前年までの小規模なギグでも延々にずっと演り続けた。
 ザヴィヌルの当時幼い息子は父親に訊いたという。
「ねぇ、何でジャコは毎晩同じソロしかやらないの?」

 ジャズメンとしては有り得ない。
 だがジャコは酔っ払うと「俺はベースのジミヘンだ!」とよく叫んだらしく、そう言えばジミヘンも歯でギターを弾くとか、ギターに火を点けるといったパフォーマンスは自分でも飽き飽きしており、「もう止めたら」と言われても、観客はこれを観たくて来ていると演り続けたエピソードと重なる。ジミヘンは27歳で亡くなった。ジャコは京王プラザのバーで、ボビー・トーマス(WeatherのPercussion)と呑んでいる最中、突如泣き出して「俺は33歳までしか生きられない」と言ったという。実際にはもうちょっと、長生きをしただけだった。


 自らの作曲したソロ曲も、"Amerika" (これもアレンジ曲だが)と "Continuum" のみ。ほぼナチュラル・ハーモニクスのみで奏でる難曲"A Portrait of Tracy" をライヴで演る事は滅多に(殆ど)なかった。まあ既に離婚していた妻の名を冠した曲は演り難かったのかもしれないが。

※このドイツ公演のライヴのソロ後半が「トレイシーの肖像」


 前のエントリで述べた様に、私はベーシスト目線で先ずジャコを見ていた(聴いていた)のだが、特に日本にはジャコを全肯定し神聖視する雰囲気というのが強くて、私は内心「いやしかし、本当にキレキレだったのはほんの数年じゃないか」という思いもずっと抱いていた。
 1992年に、「ジャコ・パストリアスの肖像」という評伝が日本でも翻訳出版された。ビル・ミルコウスキーというジャーナリストが本人にも幾度も会い、周囲の人々に入念に談話を聞いて書かれた本だが、不調になっていく後年の部分はジャコの奇行や起こしたトラブルを誇張して書いている、と元家族が非難している。
 2016年、Metallicaのベーシスト、ロバート・トゥルヒーヨが製作総指揮(スポンサー)を務めた、ジャコを描くドキュメンタリ映画「Jaco」が製作され、日本語盤は昨年発売になった(どうも日本語字幕盤はもうAmazonでは買えないらしい)。
 2時間の本編に入りきらなかったインタヴュウ集が同じ分程度あって、色々新しい話もあったのだけれど、ミルコウスキー本の表現は寧ろ随分控えめに書かれていたと思える程、亡くなる前の状態は悪かったのは事実だった。インタヴューイー達は皆、ジャコの破滅的な生き方を止められなかったという負い目を感じていたのは間違いない。


 ジャコの亡くなる前の事は日本の「ADRIB」や「Bass Magazine」などにも記事が掲載されていたので、ジャコに関心を持つ音楽ファンの間では相応に知られていた。

 中村隆太郎監督とジャコについて話をした際、特に1984年来日時の、ビニールテープを顔に貼ってステージに上がった、という話をしたのを覚えているので、隆太郎さんはミルコウスキー本は読んでいなかったとは思うが、雑誌などでそうしたエピソードを知っていたのだろう。

 私には、こうしたエピソードは悲しく感じられていた。そうまでしても観客を驚かせ、楽しませようというアティテュードよりも、プレイの方で圧倒して欲しかったのだ。
 だが隆太郎さんにとっては、そんな事をしてステージに立つジャズ・ミュージシャンはかつてなかったし、圧倒的な独自のキャラクター性として受け取られていたと思う。勿論、その観点も正しいのは言うまでもない。

 


 英利政美という人間をキャラクターとして出すと決めたのは初期からの構想だったが、何しろ存在としては「ワイヤードの神」なので、当面は声のみの登場回が続いた。
 しかし終盤に差し掛かり、いよいよキャラクターとして描く段になった。

 岸田隆宏さんにどういう構想を話したのか、私は全く聞いていなかった。
「これが、英利政美」
 キャラ表のコピーを見せられて、心底仰天したのが私だった。

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 シナリオには「神経質そうな男」としか記しておらず、全面的に監督のセンスに任せられていたのだが、腕や腹にビニールテープをぐるぐる巻き、顔にもウォー・ペイントの様にテープが貼られた、あの姿が描かれていた。

 ジャコに関する話はあくまで余談だったのだが、隆太郎さんの中では英利の造形イメエジに繋がっていたのだ。

 あまりに短い絶頂期、短い人生を駆け抜けたというジャコの生涯も、全く同質ではないにせよ、英利に重ねられていたと思う。


 ところで、ジャコがビニテを貼って――というのは記事で読んだだけで、どういう風に貼っていたかが判る写真というものを、実際に私は見た事がなかった。当然隆太郎さんも、岸田さんもそうだと思う。

 探しに探して見つけたのがこれらの写真だった。

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 これは昨年発売された、ジャコに最も信頼されたフォトグラファー内山繁氏の「JACO ジャコ・パストリアス写真集」の1枚。

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 英利の様相とは随分印象が違うと思う。
 英利のデザインは完全にイマジネーションから生まれたのだった。

 

 

Layer:09 Protocol - Manifestation of Deus

 

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 玲音は閉じこもっていた家から出る。
 空を見上げ――
「『たった一つの真実』――、神さま……」

 すると答える。
「そうさ、僕さ」
 この9話でデウスの台詞はただ一つここだけ。

 

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 中村隆太郎監督はこの終盤のシナリオの柱を組み替えて、ここで最後のドキュメンタリ・パートが来る様にコンテ修正した。

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 橘総研の研究員として働いている頃の英利。その傍らに立ち、感心している様に見える人物は――、やはり岩倉康雄だろう。シナリオにはそういう描写はしていないが、隆太郎さんの修正コンテでこう描写された。

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 橘総研の研究員だった英利政美が、地球を覆うニューラル・ネットワーク仮説を進化させ、人間を無意識下にデヴァイス無しで接続されるというシューマン共鳴ファクターを第7世代のネットワーク・プロトコルへ密かに書き込んでいたのだが、それを上層部に知られて解雇されると、一週間後に英利は轢死体として山手線上で発見された――。

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 この雨の轢死体発見場面は「下山事件」として知られる、下山国鉄総裁轢断事件を熊井啓監督が映画化した傑作「日本の熱い日々 謀殺・下山事件」(1981) に準えている。

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 自殺か他殺か、いずれにせよ英利政美という人間は肉体としては死んだのだ。
 だが――、

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 岩倉家からやや離れた道の向こうに、誰かがいる。

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 玲音、そちらの方を向くが――、

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 遠くに立っておりよく判らず小首を傾げる。

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 徐々に判ってくる、あの「神を騙る男」の姿。

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 顔――

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 今話の原画の方々。

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 画面作成については、ちゃんと角銅さんとしてクレジットされている。

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 ネットワークの開拓史そのものを物語に組み込んだフィクションは、小説ならば成立するだろうが、1クール物のアニメに普通ならば収まらない。しかしこういう構成ならば入れる事が出来た。
 ただ、ドラマについては、過去の一部が明らかになったものの玲音の、そして書いている私自身の「ちょっと待って」という内向きなものになったのは、8話があまりに重く、すぐにそこから次の展開に行きたくなかったからだと、見返してそう思った。

 角銅さんとはほぼ同時期に、「ゲゲゲの鬼太郎」4期89話をやった後は、2000年の「デジモンアドベンチャー02」13話の「ダゴモンの海」まで仕事としての共作出来る機会は空く。

 

Layer:09 Protocol - Memory Check

 

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 9話の回顧が短めに終わりそうなのは、一見混沌に満ちた様に見えるこの回が、ドキュメンタリとドラマを交錯させる構造にする事で、多くの情報を一挙に整理し、提示出来ていたからだった。改めてここで記さねばならない事があまりないのだ。

 ロズウェル事件という突拍子も無いイントロはあれど、以降は如何に現在のネットが成り立っていったか、その思想面のみだが全くそのままに描いている。
 今は当たり前に「存在する世界」であるネットも、様々な人々の「構想」から生まれ、現実化していった。シオドア “テッド”・ネルソンXanadu構想(のHyperText)は紛れもなく現在のWWWの原形だが、そのルーツにはMemexが在った。

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 Xanaduは、構想通りのインフラは整備出来ず、現在もOpenXanduとしてプロジェクトは進められてはいるが、今のネットを“支配”しているWWWはティム・バーナーズ=リーが作り上げたもので、ネルソンから見るとHTML,XMLは欠陥だらけで到底Xanaduの理想とは異なるものになっているという。

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 こうした「ストーリー」は、「Wired」という日本版も出版されていた雑誌に記述があって、「lain」の構成の取材元になっていた。
 1998年に、日本版の「Wired」が休刊になった(後に復活するが昨年再休刊)。
lain」でネットの事を「Wired」と呼ぶ事にしたのは、これらの事情を踏まえていた。
 だが勿論、字義通り「繋げられている」という事を強調したかった方が大きい。

 

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 玲音は「カチカチカチ メモリー・チェック」と言いながらNAVIに向かっている。
 PCにせよMacにせよ、起動時にはRomの起動シークェンス・プログラムでメモリ(RAM)チェックを行う。正常ならすぐに終了して次の課程に進むが、RAMに異常があると昔のPCは実際に電源リレーが働いてカチカチカチという嫌な機械音がした。

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 玲音がチェック・テストを行っているのはRAMではなく長期記憶(ストレージ)のデータだ。
 ナイツが玲音にインストールさせようとしていたのは、タロウによると不揮発性メモリ=ROMであるらしい。メモリと言っても様々な在り様がある。
「記憶にない事は、無い事と同じ」
 これは「lain」のメインのテーゼなのだが、私はこのライト・モチーフに取り憑かれており、「THE ビッグオー」でも違う形で物語にしていく。

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 失われていた「岩倉玲音」の記憶をサルベージすると、玲音は以前、この岩倉家に二人の男(MIBではないだろう)に連れて来られ、

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初めて父、母、姉と対面し、

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自分の部屋を与えられた。

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 ではそれ以前は何だったのか――?

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 それは、「かつての玲音」の記憶にも無い。

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「嘘だよ……。そんなの嘘だよ……」

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 ドキュメンタリ・パートは、現在進行形のネット環境について。
 ネットは爆発的に発展し、ニューラルな結びつきをして発展しているのは間違いない。
 ここで人間の脳との相関関係を見出せるのかについては、ダグラス・ラシュコフ(「サイベリア」著者)の意見を紹介するに留めた。
 放送から数年後、ダグラス・ラシュコフからメールを貰った。「やあ、アニメを見たよ。とても面白かった」と好意的だった。

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 ここからは私の妄想が加わる。
 地球固有に遍在する超長波「シューマン共鳴(共振)」は、劇中では8hzと記しているが、厳密には7.83hzが第一次波で、14.2hzの2次、20.3hzの3次が共鳴し合っているのだが、時代と共にこの周波数にはズレもある様だ。
 こうした地球の定在波が存在する事は19世紀末、ニコラ・テスラが既に予測していた。

 はっきりと存在を示したのがヴィンフリート・オットー・シューマンというドイツ人、なのだが、戦後はアメリカで活動していた科学者。
 ナチスから先端的科学者をひっそりとアメリカに逃れさせたペーパー・クリップ作戦の対象者の一人でもあった。

 このシューマン共鳴のCGも角銅博之さん。次第に地球が歪んでいくまでの描写を作って貰い、私がテキストを載せた。
 

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 ここからのトリップ映像は私。
 シューマン共鳴を「媒体」として使えたら(テスラの『世界システム』的に)、特別なデヴァイスがなくとも人はネットに常時接続状態化する事が可能ではないか、というのが「lain」のドグマ。

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 様々な恩恵もあるだろうが、意図せず秘密が暴露されたり、正常だと思っている人も外部から毒電波で操縦が可能にもなる。
 だから、これは「邪悪」な考えでもある。

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 とにかく驚くのは、このドキュメント・パートはコンテで出された尺で作っているだけで、音楽の事を考慮せずに繋いでいるのだが(本来ならこうしたイメエジ・シークェンスは音楽に合わせて画を作る)、竹本晃さんはややヴァンゲリスっぽいアナログ・シンセを使った音楽で完璧にシンクロさせ、恐ろしいまでに昂揚感を生み出してくれた。
 今更ながら感謝するばかりだ。

 

 

Layer:09 Protocol - Death to Taro

 

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 玲音はリアル・ワールドで自分の知らない玲音が頻繁に見掛けられるサイベリアへ赴く。

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 その姿を見つけたJJ、指笛で玲音を呼んだ。

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 忘れ物だと、封筒を手渡される。
 勿論玲音に心当たりは無いが、この一連のJJの言動は、彼が何ら謀略的な事には関与していないと思える。

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 封筒の中には――

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 ナイツの小さな拡張カード
 はて、これは何バスだろう。橘NAVI独自な規格か。
 

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 玲音はじっとそれを凝視しながら、これからどうするかを考えている。

 

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 ドキュメンタリは、ジョン・C・リリーの紹介に移る。
アルタード・ステイツ 未知への挑戦」(感覚遮断実験で超越的な体験をする科学者のSF)と「イルカの日」(イルカを軍事利用しようとする米軍と対立する科学者の話)という、全く異なる内容の二本の映画のモデルになっただけで、リリーはヒーローだと言えよう。
 アイソレーション・タンクは近年日本でも体験出来る施設があった様なのだが、ケタミンなど違法薬物を併用しないとリリーの実験を再現は出来ない。
 晩年にはE.C.C.O.という異次元人的な存在については言及しなくなった。

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 さて主題はイルカのエコーロケーションという、リリーの中期の研究テーマだ。
 近年、イルカはそれぞれ固有の「名前」を持っており、それで呼び掛けているらしいという研究が発表されている。

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 このイルカの3Dモデリングと海中の表現までは角銅博之さんが担当され、私がノイズを乗せている。
 私のTwitterアカウントでは、角銅さんが如何にデジモン・アニメ(特にアドベンチャー、02、テイマーズ)で、普通の演出家はやらない、自ら創り出す3D映像でテレビ・アニメの表現を拡大させてきたかについて触れた。
lain」のコンテを担当されるというので、「だったら」と私が作るつもりで書いたドキュメンタリ・パートを助けて戴いたのだった。

 

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 玲音はタロウを「デートしよう」と誘い出す。

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 タロウは興味なさそうにしていたが、

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 玲音は「ワイヤードのレイン」そのものだと改めて知り――

 

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 玲音の部屋に招き入れられたタロウ、冷却装置に興味津々。「液体炭素?」と聞いているのだが、勿論炭素が液体化可能なのは深海底ぐらいのもの。普通にシナリオでは「液体窒素」だったのだが、何故か変わっている。

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 20年前、PCの液体窒素冷却というのは冗談だったのだが、インテルのCPUが高熱化し、オーヴァー・クロッカーは実際に液体窒素を(リスク込みで)挑戦する人が現れた。普通の御家庭では決して導入してはならない。

 タロウに玲音は、JJから渡されたチップを見せて訊く。
「これなんだか知ってるよね」
 

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 被せてレインのドスの利いた声で「ナイツなんだよね」

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 逃げようと後退るが、水が漏れた床のケーブルに足を引っ掛けて倒れるタロウ。

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 玲音は、立ち上がる仮想モニタ群を背に立ちNAVIに音声コマンド。

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「Play Track 44」
 鳴り出すサイベリアの4つ打ち。


「カッコいい」場面なのだけど、このコマンドの意図は、本当は何らかの音声証拠をタロウに突きつけるものだった筈なのだが、シナリオでもただ音楽が流れると書いている。

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 JJがソースにしている音楽に、何らかの洗脳効果があるらしいという事は、玲音がタロウをいたぶって吐かせるのだが(この描写も現代だと虐待になるのだろうか)、もうちょっと判り易いシナリオにしておけば良かったなぁと少し後悔。

 

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 夫婦・父母役の仕事が終わった、康雄と美穂。

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 そして、自らモデムと化している、美香。

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 タロウは、ナイツの小間使い役を担っていたに過ぎないのだが、ナイツへの信奉は恐ろしいまでに純粋だった。「普通の人が知らない真実」という言葉に運命を狂わされたた若者は、過去の歴史を振り向けば少なくない。

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 タロウは、帰り際に玲音にキスをする。しかも噛んでいたガムまで玲音の口内に押し込んだ。

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 lainファンからタロウにヘイトが集まるのも此仕方ない。
 でも――、玲音にしてみれば、リアル・ワールドに岩倉玲音として居られた時期に、キスの一つも体験出来たのは、悪い事ではなかった気がしなくもない。

 

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Layer:09 Protocol - Roswell Incident

 

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 全13話何れにも思い入れはあるが、好きな話数というとやはりこの9話になる。
 自ら映像作成に関与したからもそうだが、何より話法として独自性を最も発揮出来た。シリーズとしての物語はまとめに掛かる段階だからこそ、思い切った。
 ただ、当初の意図としては、最終話に向けて現場を少しでも息継ぎ出来る様にというものだった。
 
 コンテ:仁賀緑朗(角銅博之) 演出:西山明樹彦 作画監督:関口正浩

 

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 アヴァンでは「あなたが信じようが信じまいが、神が存在する」という語り。
 この部分の音響効果はこの話数から更にフランジャーの掛かりが強くなってくる。

 

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 アヴァンが明けるや否や、いきなり実写映像。しかもロズウェルの空撮。
 After Effects Plug-in "CineLook"を目一杯強く掛けている。
 映像は実際のロズウェルで、私が構成を担当したUFO番組のイメエジ・カットを原形ないまでに加工したもの。

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 なんでいきなりロズウェルのUFO墜落の話が始まったのか、視聴者は当惑したに違いない。

 

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 と――、電線。いつもの「もーん」というノイズは不安にさせる意図でつけられてきたが、今話に限っては「あ、いつものlainだ」と視聴者を安堵させただろう。

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 久々のくまパジャマ着用はシナリオでは初めてここで記した。
 玲音は「何事もなかった」事にしたいと願っているのだから。

 しかし、「リアル・ワールドの特定の記憶」の消去は、自分自身の存在すらも危うくしてしまい、今のところ失敗している。

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 暗い部屋に、ドアが開いて光が差し込む。誰かが来た気配。

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 玲音は這いながら移動し、誰が来たのか観る。

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「!」

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 グレイ・タイプ・エイリアンだ。しかも赤と緑の縞セーターを着ている。

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 岸田さんのデザインはテスター社のロズウェル・エイリアンのプラモデルを参考に描かれていたが、実際の作画はやや独自なアレンジになっている。
 ニヤ、と笑った様に見える。

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 しかしすぐにグレイの姿は見えなくなる。
 玲音は膝を抱え、再び抑鬱的になる。

 

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 UFOにグレイと、このアニメの作者の正気が疑われる展開。
 MJ-12(マジェスティック12とも呼ばれる)文書については、劇中でのアナウンサーの語り通りであり、偽文書だという事は誰もが認めている。

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 ただ、では何もなかったのかについては、不可知論者である私は留保する。こういったリーク文書は、本当に隠したい情報を嘘に紛れ込ませるというディスインフォメーション(諜報活動)に屡々用いられるからだ。

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 勿論、「本当に隠したかった事」が円盤墜落だなどと言っている訳ではない。冷戦が始まった時期の出来事だった。

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 さて、大統領権限すらも超越する様な12人(入れ替えがあったので計13人)の委員会(これがMJ-12)のメンバーとして文書に記されていたのは、いずれも実在であり、もしそんな委員会があったら入っていてもおかしくない人々だ。
 国防長官だったジェームズ・フォレスタルは後に謎の自殺を遂げている。

 さて科学者の中で名が挙げられているのが、ヴァニヴァー・ブッシュ。

 After Effectsで、こういう画像とテキストを動かすやり方は、中原順志君の部屋に安倍君と一緒に行った時に教わった。教わらないと一生作れなかった。

 

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「コネクト・ワイヤード」

 玲音のワイヤード・アクセスは、特別なデヴァイスは必要なく、ただインターフェイスの画面を見つめるだけでダイヴ・イン/ジャック・イン出来るというのはこれまでも既に見せているのだが、大抵は玲音の主観で切り替わっていた。ここで初めて意識の移行を客観描写している。

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 ワイヤードには「ゲルゲ怪人」状のユーザ達。
 岸田さんは「超人バロム1」は知らなかったのか、サイズの誇張はしていない。
 ともあれ、玲音が知りたい情報に、Yahxx知恵袋の様に適切な回答が出来るユーザはもういないのだ。

 

 

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 そしてヴァニヴァー・ブッシュについてのナレーションが再開。

1919年にMITでアナログ・コンピュータである微分解析機を開発した。
 ナレーション通り、MEMEXという「概念構想」を提示した事で、ハイパー・リンクとデータベースという今のWebの在り方、更にユーザ・インターフェイスの原形を生み出した。ただ、彼はそれを実現させるには既に老いていた。
 彼のMEMEX構想は、後のテッド・ネルソンやダグラス・エンゲルバートらによって現実的なものへ継がれる。
 という事で、このドキュメンタリ・パートは「ワイヤードの歴史」を概説し始めたのだ。

 

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「魔法使いTai!」


 実写ライターの私が、本格的にアニメに参加する様になった初期作品の一つであるOVA「魔法使いTai!」の経緯は、ここで既に述べた。

 この頃はソフトがよく売れた時代で、この作品もOVAなのにサントラは勿論の事、イメージ・ソングCDなども何枚かリリースされ、当然の様にドラマCDも企画された。
 しかし「小中さんには書けないだろう」という事で(確かにそうだったのだが)、山口宏さんが脚本を担当された。

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 ヒロインら魔法クラブのある高校の文化祭というコンセプトとなり、様々なクラブ活動を描くというもので、軽音楽部のライヴにヒロイン3人娘が飛び入りするという設定で、私が当時やっていた(今もあるんだけど休止中の)ホーン・セクション入りバンドで「魔法少女メドレー」をヘッド・アレンジし、演奏した。オケのみ一発録りでADATのステレオに録音し、後で3人のヴォーカル、更には観客である生徒達の歓声や台詞が録音されて完パケになった。
 元々、我々のバンドの持ちネタの一つだった「スキスキソング」(「ひみつのアッコちゃん」ED)と、Chaseの「Get It On」をミックスするネタ曲があったのだが、これを拡大して東映動画魔法少女物OP曲メドレーにしたものだった。

 

 また、映画研究部の青臭い自主映画にヒロインの一人が出演するというネタは、「凍った踏切」というタイトルになった。実はこのタイトルは、総監督である佐藤順一氏が自主製作時代に作った短編作品からの引用。この自主アニメは、先日出版された「別冊映画秘宝 アニメ秘宝発進準備号 オールタイム・ベスト・アニメーション」で角銅博之さんが、ホラー・アニメ Best10の1本に選出している程完成度が高く、怖い映画である。
 ここで先の私のエントリを読み返して貰いたいのだが、あれほどホラーが嫌いで、ちょっとでも「怖い話」を雑談中に始めたら本気で怒り出す佐藤監督が、なんでこんなに怖いものを作ったのかは永遠に未完な謎だ。

 

 さてCDは発売になり、OVAの製作もやっと終わる1997年になって、完成記念ファン感謝イヴェントをやろうという事になる。言い出しっぺはやはり伊藤郁子さんなのだが。
 文化祭CDのネタを実際にやろうという事で、私たちのバンドのライヴ演奏もやったのだが、映研の映画も上映しようという事になる。
 だったら佐藤順一監督の「凍った踏切」を上映すればいいのだが、怖すぎるし、アニメと全然関係無いので、じゃあオリジナルで短編映画を作ればいいじゃないか、という無茶な話になる(雑談会議あるある)。
 誰が作るんだ……。ヒロインの一人、飯塚雅弓さんを主演にイメエジ・ムーヴィーみたいなものなら何とか出来るか、と、実写自主映画の監督上がりである私が撮らされる事になる。

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 まだその頃8mmフィルムはあったのだが、1日で撮るしかなく失敗が出来なかったので、ビデオ撮影となる。
 それまで、民生用でビデオの編集というと、家庭用VHS(初期にはβマックスもあったが)でダビングしていくオフライン編集(当然画質は劣化する)と、3/4インチなど上位フォーマットにアップコンバートしてプロ用編集室で行うオンライン編集という2択しかなく、後者には多大な予算が必要で全く考慮の余地が無かった。
 ところが1996年頃、ビデオをデジタル化したDVというフォーマットが策定され、家庭用ビデオキャメラも発売され、更にその映像はFirewireIEEE1394)規格でPC/Macにとり込める拡張ボードが10万円程度で発売された。
 それまでパソコンでのビデオ編集はMotionJPEGの高価なボードと、UltraSCSI接続の10000回転ハードディスクという設備投資で最低でも150万くらいの投資が必要だったのだが、DVの登場で一挙に手を出し易くなっていた。
 また編集するソフト環境も、AdobeのPremier、Aldusから買収されたAfter Effectsが(高価ではあったが)整備されていた。
「8mm自主映画」のシミュレーションをするにはビデオ映像のままだと全く雰囲気が違ってしまう。
 当時のPhotoshopは、サードパーティが多くのプラグインを発売していたが、After Effectsもどんどん新しいプラグインが発売され始めていた(後の『lain』では画面を様々に汚す系のものを多用した)。
 
「CineLook」という、フィルムの粒子荒れやフィルムの傷、パーフォーレーション(フィルムを送る孔)のヘタりを再現しガタガタとフレームを動かすといった一連を再現出来るというプラグインが発売されるというニュース・リリースを雑誌で見つけた。
 しかしまだ店頭には並んでおらず、私は輸入元に直接電話をしてそれを買いに行った。
 日本のユーザとしてはほぼ最初の何人かに入った筈だ。

 このプラグインの効果は絶大で、「lain」の9話で大いに活用している。


 ――という事で、あとはDVカメラさえ買うと、映像製作環境が整ってしまうという実に格好の時期だったのだ。
 After Effectsで何重にもフィルタを掛けると、数十秒のレンダリングでも一晩かかるので、映像編集専用にPowerMac 950を新規に導入し、2GBx2のRAID HDDを増設(これが一番高かった)。

 当然ながら、これらの設備投資も映画の製作費も私の自腹だった。

 

 3分程度の作品だが、高校生が目一杯背伸びした青臭い青春映画という事にして、佐藤さんにラフなイメエジボードを描いて貰い、それを元に私が撮影用コンテに割って撮影した。
【追記】ダイアローグやおおまかな筋は、山口宏さんがCDドラマで書いたものに則っている。


 最後に、ただ一人の出演者である飯塚さんが、踏切をスキップしながら去って行くラスト・カットは、スローモーションになってアニメーションの羽根が浮かび上がって羽ばたく――というカットになっていて、羽根のアニメーションは伊藤郁子さんが描いてくれたのだけれど、まだ初心者の私はそれを実写に合成するスキルがなかったのだが、知り合ったばかりの角銅博之さんが助けてくれ、マッチ・ムーヴとコンポジットは角銅さんが担当され、見事なカットに仕上げられた。

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 この「凍った踏切」(実写版)と、「ゲゲゲの鬼太郎」4期89話「髪の毛地獄! ラクシャサ」、どっちが先だったのか、ちょっと思い出せない。
【追記】角銅さんも、どっちが先か覚えていなかった。

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 結局1話だけになってしまったが、「ゲゲゲの鬼太郎」を私が書いたのは、そもそもこの期のシリーズ・ディレクター西尾大介さんが「金田一少年の事件簿」に行く事になり、後を受けた(クレジットはされていなかった気がする)佐藤順一さんが、ホラーなんだから小中さんにも書いて貰おうと言いだしたからなのだが、いざ打合せする段になると、佐藤さんは「夢のクレヨン王国」を立ち上げる為に抜けてしまったので、そこで角銅博之さんと組む事になった――という経緯で、色々と偶然が繋がっての事だった。

 角銅さんとは、先にパソコン通信のクローズドな会議室で知り合っていた。元々グループえびせんという、自主映画界では知られた自主アニメサークルの作家で、特撮系自主映画をやっていた私とは非常に趣味嗜好知識が重なり、すぐに仲良くなっていた。
 もうこの頃、東映専属ではなかった気がするが、角銅さんは様々な偽名で多くの他社作品でコンテを切っていた。

 そして「lain」9話が角銅さんの担当になった。