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serial experiments lain 20th Anniversary Blog

Layer:09 Protocol - Memory Check

 

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 9話の回顧が短めに終わりそうなのは、一見混沌に満ちた様に見えるこの回が、ドキュメンタリとドラマを交錯させる構造にする事で、多くの情報を一挙に整理し、提示出来ていたからだった。改めてここで記さねばならない事があまりないのだ。

 ロズウェル事件という突拍子も無いイントロはあれど、以降は如何に現在のネットが成り立っていったか、その思想面のみだが全くそのままに描いている。
 今は当たり前に「存在する世界」であるネットも、様々な人々の「構想」から生まれ、現実化していった。シオドア “テッド”・ネルソンXanadu構想(のHyperText)は紛れもなく現在のWWWの原形だが、そのルーツにはMemexが在った。

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 Xanaduは、構想通りのインフラは整備出来ず、現在もOpenXanduとしてプロジェクトは進められてはいるが、今のネットを“支配”しているWWWはティム・バーナーズ=リーが作り上げたもので、ネルソンから見るとHTML,XMLは欠陥だらけで到底Xanaduの理想とは異なるものになっているという。

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 こうした「ストーリー」は、「Wired」という日本版も出版されていた雑誌に記述があって、「lain」の構成の取材元になっていた。
 1998年に、日本版の「Wired」が休刊になった(後に復活するが昨年再休刊)。
lain」でネットの事を「Wired」と呼ぶ事にしたのは、これらの事情を踏まえていた。
 だが勿論、字義通り「繋げられている」という事を強調したかった方が大きい。

 

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 玲音は「カチカチカチ メモリー・チェック」と言いながらNAVIに向かっている。
 PCにせよMacにせよ、起動時にはRomの起動シークェンス・プログラムでメモリ(RAM)チェックを行う。正常ならすぐに終了して次の課程に進むが、RAMに異常があると昔のPCは実際に電源リレーが働いてカチカチカチという嫌な機械音がした。

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 玲音がチェック・テストを行っているのはRAMではなく長期記憶(ストレージ)のデータだ。
 ナイツが玲音にインストールさせようとしていたのは、タロウによると不揮発性メモリ=ROMであるらしい。メモリと言っても様々な在り様がある。
「記憶にない事は、無い事と同じ」
 これは「lain」のメインのテーゼなのだが、私はこのライト・モチーフに取り憑かれており、「THE ビッグオー」でも違う形で物語にしていく。

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 失われていた「岩倉玲音」の記憶をサルベージすると、玲音は以前、この岩倉家に二人の男(MIBではないだろう)に連れて来られ、

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初めて父、母、姉と対面し、

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自分の部屋を与えられた。

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 ではそれ以前は何だったのか――?

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 それは、「かつての玲音」の記憶にも無い。

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「嘘だよ……。そんなの嘘だよ……」

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 ドキュメンタリ・パートは、現在進行形のネット環境について。
 ネットは爆発的に発展し、ニューラルな結びつきをして発展しているのは間違いない。
 ここで人間の脳との相関関係を見出せるのかについては、ダグラス・ラシュコフ(「サイベリア」著者)の意見を紹介するに留めた。
 放送から数年後、ダグラス・ラシュコフからメールを貰った。「やあ、アニメを見たよ。とても面白かった」と好意的だった。

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 ここからは私の妄想が加わる。
 地球固有に遍在する超長波「シューマン共鳴(共振)」は、劇中では8hzと記しているが、厳密には7.83hzが第一次波で、14.2hzの2次、20.3hzの3次が共鳴し合っているのだが、時代と共にこの周波数にはズレもある様だ。
 こうした地球の定在波が存在する事は19世紀末、ニコラ・テスラが既に予測していた。

 はっきりと存在を示したのがヴィンフリート・オットー・シューマンというドイツ人、なのだが、戦後はアメリカで活動していた科学者。
 ナチスから先端的科学者をひっそりとアメリカに逃れさせたペーパー・クリップ作戦の対象者の一人でもあった。

 このシューマン共鳴のCGも角銅博之さん。次第に地球が歪んでいくまでの描写を作って貰い、私がテキストを載せた。
 

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 ここからのトリップ映像は私。
 シューマン共鳴を「媒体」として使えたら(テスラの『世界システム』的に)、特別なデヴァイスがなくとも人はネットに常時接続状態化する事が可能ではないか、というのが「lain」のドグマ。

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 様々な恩恵もあるだろうが、意図せず秘密が暴露されたり、正常だと思っている人も外部から毒電波で操縦が可能にもなる。
 だから、これは「邪悪」な考えでもある。

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 とにかく驚くのは、このドキュメント・パートはコンテで出された尺で作っているだけで、音楽の事を考慮せずに繋いでいるのだが(本来ならこうしたイメエジ・シークェンスは音楽に合わせて画を作る)、竹本晃さんはややヴァンゲリスっぽいアナログ・シンセを使った音楽で完璧にシンクロさせ、恐ろしいまでに昂揚感を生み出してくれた。
 今更ながら感謝するばかりだ。