実際にはこの時制よりもうちょっと早い時期――、7,8話辺りのホン読み会議の時だったと思う。
私は予定を1時間勘違いしてトラスタに来てしまい(そういう事はままやってしまう)、1階の会議室兼試写室でぼうっと時間を潰していたら、私を見掛けたスタッフが中村隆太郎監督を呼びに上へ行ってくれたらしく、隆太郎さんが降りてきてくれた。
二人のみで話すのは、忘年会以来。私はこれ幸いと、シリーズのエンディングで玲音をどう描くか、率直に意見を聞いた。
本ブログで書いてきたとおり、拳銃で自分の喉を撃ち抜くゲーム版ムービーのラストを、実のところ私は1話を書いた時から既に変えるつもりだったのだが、全くゲームと乖離してしまうのも本意ではない。
隆太郎さんも、エンディングについて「そういうんじゃない方がいいなぁ」という見解だったのだが、これはかなり控えめな表現だったと後で判る。
単に好き嫌いという軽い見解ではなかった事は、製作が終わってから知った。
とても重い経験を、隆太郎さんと奥様はしておられたのだが、それは私がここで軽々に書ける話ではなく、書く資格を持たない。
また隆太郎さん自身の事もあって、「神霊狩 -GHOST HOUND-」については、この「lain」回顧の様にクロニクルを書く気には当面の間はまだなれないだろう。
(ざっくり回顧は『このアニメ映画が見たい!』という本にて記している)。
「lain」は20周年という記念の年であり、20周年をファンの方々が祝ってくれるというワイヤードの一部の空気感が出来ていたから、私自身殆ど20年振りに全話を見直し、覚えている限りの事をここに書く事が出来ている。
良くも悪くも、記憶が風化しつつあるのかもしれない。
ともあれ、シリーズ版「lain」の結末――、玲音がどうなるのかについては、ムービーのラストではなく、クリアしたユーザだけが体験出来る事を、テレビ放送で試みようという考え方に定まっていき、上田Pに話して了承を得た。
しかし、ゲーム版のあのボーナス・イヴェントに匹敵するだけのイヴェント性を如何に生み出すか――。シナリオでどうこうの部分ではないなとも思い始める。
この後については、最終話の回顧で記そう。