ありすはチャットをしているのではなく、「CUメール」という画像メッセンジャーを見ている。携帯機用アプリなので画質が悪い。
今なら日本はLINE寡占状態のIMだが、当時はICQというアプリがよく使われていた。「I seek you」でICQ。
なので仮想アプリとして「See You」=CUメールという名称にした。
一時は流行るのかと思った携帯のテレビ通話も、いつの間にやらSkypeすらもあまり使われなくなってきたのは何故なのだろう……。(2018年現在)
ありすのNAVI端末は、発表されたばかりだった初代iMacがモデルなのは言うまでも無い。スティーヴ・ジョブスが劇的に復帰して発表され、トランスルーセントなポリ樹脂の外装とおむすびみたいなデザインはコンピュータを劇的に変えたと当時は思えた。
しかし直に液晶の時代が来るのだが。
安倍君がこのデザインを描いてきた時、皆「やっぱりこう来たか」と笑ったのを覚えている。
当初はこのボンダイブルーのみだったが、多色展開になった時に私はグレーのiMacを実家用に購入した(のちに粗大ごみ化)。
樹莉はありすが先生とワケありな「噂」を解消するべく、グループデート(合コン)を企画していると言うのだが、ありすは「噂」ではない事に困惑している。
どうも自分と樹莉、麗華達との認識にはズレがあるのは何故か――
その答えが、ありすの部屋に訪れる。
驚愕するありす。
ドアに灰色の長い指をかけ、半開きにした外側に立っているのは、赤と緑の縞柄セーターを着たグレイ、ではなく頭だけは玲音。
岸田さんの設定画には「ぐれいん」と命名されていたので、以降そう呼ばれる事になる。
今の表現で言えば「無気味可愛い」。
半歩だけ足を踏み入れてはいるが、決して部屋の中には入って来ようとしないぐれいん。
ありすの秘密を暴露したのは自分じゃない、と訴える。
ありすにはしかし、鮮明な記憶が残っている。
あれは確かに玲音だったのだ。
ぐれいんは、ありすの認識は変わらないと判っており、だから全部それを無かった事にするという。もうそれが出来るぐらいに自分は頑張ったと。
ただでさえ異様な、本来ここにいる筈のない玲音が、全く理解出来ない話をしている事にありすは堪えられなくなる。
「怖いよぅ」と涙を零すありす。
この場面までは、まだ玲音の側の「気持ち」を視聴者は同情的に共感出来ている。
しかしここからの展開は、共感の主体がありすへとドラスティックに切り替わる。
5話、制服美香が恐ろしい思いをして帰宅すると、私服の美香と鉢合わせをした、あの場面を想起して欲しい。あれは「描写」だったが、それを「ドラマ」として描いていく。