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serial experiments lain 20th Anniversary Blog

ありす in Cyberland

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ウルトラマンティガ」の放送が始まって数ヶ月後(まだ初期クールだったと思う)、ゲーム会社からシナリオを書いて欲しいという依頼が来た。
 で、その年の内には「ありす in Cyberland」はPlayStationゲームとして発売になったのだが、それが可能だったという事は、ゲームとしての基本設計も大体出来ており、グラフィックもある程度出来ていた筈だ。
 中学生の少女三人が、サイバー世界に「ダイヴ・イン」して冒険をする――という概要も有りきで、私が考えたのはメイン・ルートのシナリオと、設定の名前などくらいではないかと思う(にしても凄まじい速度で開発された事に違いはない)。

 

 

 

 アイソレーション・タンクで没入する――というと「エヴァンゲリオン」もそうではあったのだが、私は先ずジョン・C・リリーというか「アルタードステーツ/未知への挑戦」(1979)というケン・ラッセルの迷作(個人的には大好きだった)を想起した。
 昨今のVRは、ゲームのヘッドアップ・ディスプレイ+イヤフォンでの視聴覚に限定したものまでが商品化され一般に知られているが、身体の全感覚を仮想世界に移行させるには、アイソレーション・タンク程の規模ではなくとも、リアル世界の肉体を棚上げさせておかないと厳しいだろう。

 ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」の元々のタイトルが「Alice in Underground World」だったのは前にも述べたが、地下に潜っていくイメエジでサイバー世界を冒険するなら、アリスしかない。という事でヒロインの名前を決め、タイトルもこうなった。

 

 

 サイバーSFが「パンク」で始まり、ヴィジュアルの面では「スティーム・パンク」というコンセプトが先に広まったが、そもそも最初から退廃している筈がなく、もっとライトなアプローチもアリだろう、とこの企画に関わってから考えだした。
 当時全くそんな言い方はメーカーも私も用いてないが、さしずめこれは「サイバー・ポップ」だった。
 またゲームなので、3Dグラフィクスは当然の様に使えたし、ネット世界を8つのレヴェルに一旦区切り、更にその下に未知の第9のレヴェルがある――というコンセプトを考えた。勿論これはOSI参照モデルを暗喩しているのだが、これについては「serial experiments lain」の方で説明した方がいいだろう。



 さてこのゲーム、 詳しくはゲームカタログ@Wikiなどで見て貰いたいのだが、この会社はこのプロジェクトともう一つのプロジェクトに多大な資金を投下しており、私が関わったのはゲーム以外だとテレビアニメ2話分のシナリオも書いている。
 しかしこのアニメ版というのが、オンエアで見て茫然となる程に酷い出来で(1話はまだしも2話は殊更に酷かった)、結局予定されていたビデオパッケージは1話のみ出た。
 幸い、なのか悲劇なのか判らないが、誰もこのアニメ版はテレビで私以外に見ておらず(と頑なに私は思い込んでいる)、伝説にすらもならなかった。

 しかし、PlayStationソフトの方は、クォリティは問題無かったし、普通に楽しめるものになっていたとは思う。ギャルベンチャーなるジャンルを標榜していたが、あまり分岐もなくてゲーム性は低かったのは確かだろう。

 何故かkonaka.comにはゲーム版の続編のシナリオが上げられているのだが、続編を作る話があったかどうか、今の私の記憶からリセットされ完全に消去されてしまっている。
 このゲーム会社は本作ともう一作の商業的失敗で無くなってしまったのが、私もショックだったのだろう。

 

 なのでこの作品自体にはあまり良い思い出がないのだが、ヒロインのありすを演じた浅田葉子さんの演技というか台詞の言い方が独特で、とても印象深かった。
 あと、このメインテーマ曲「とっておきのHeart Beat Time」(作詞:佐藤ありす 作曲:柴矢俊彦)はメインの三人(宮村優子さんと荒木香衣さん)で歌っているのだが、ゲーム内のカラオケ・イヴェント・ヴァージョンというのがあって、これは浅田さんがソロで歌っており、アレンジも素晴らしいダンス・ビートになっていて、理想的な90年代アイドル・ソングだと今尚思っている(最近またよく聴いている)。
 


 
「ありす」を何とか再生させたい――、と意識していた訳では全くないのだが、実際には「serial experiments lain」の登場人物に「ありす」を再び登場させ、浅田さんに演じて貰う事になった。

 勿論、「Cyberland」のありすと「lain」のありすは全く別の存在であり、視聴者には何の関係もない。しかし――、私の中では明らかに繋がっていた。

 

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 え、はてなブログ、もう画像上げられないのか。うーん無料だとやはり限界か……。