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serial experiments lain 20th Anniversary Blog

Layer:04 Religion - PHANTOMa

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 学校では少年の不審連続死事件の噂で持ちきり。「3年の男子」という台詞を書いてしまったのもここ。いや申し訳ないとしか……。
 しかし当時誰も気にしていなかったのも不思議だ。

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 玲音はすっかり明るい性格になっていて、ノリも軽くなっている。本来なら喜ばしい筈なのだが、ありすはあまりに急激な変化に戸惑っている。

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 この時、玲音が後ろ手に読んでいた本を隠すのだが、暫く前に海外からの質問メールがあって、この本は実在するのかと問われた。表紙のデザインだけを見ると、'40年代のAstonishing Storiesの様なSFパルプ・マガジン的だ。

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 しかし反転すると「Hacker Heavens」と誌名はちゃんと読める。シナリオでのイメエジは、「Super ASCII」や「ざべ (The Basic)」の様な雑誌だと考えていた。

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 事件の事をワイヤードで調べるには、早く帰ってNAVIのチューンナップを仕上げたいと思っており、歩き食べしていたクレープを一気に口に押し込み、玲音は三人に先に帰ると言っていそいそと走って行く。

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 その後ありすは、ぶつかってきた幼い女の子が落とした犬のぬいぐるみを拾ってあげる。
ゲームに登場していた「ビケちゃん」に相当するが、ビケちゃんというぬいぐるみのオリジンは「魔法使いTai!」だったか、記憶がもう……。後の「エコエコアザラク-眼-」の時に伊藤郁子さんにイメエジ・デザインを描いて貰った(が、キャストの年齢が上がったので使用出来ず)。

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 この女の子は「ガッチャ」と同一なのだが、こちらは同年齢の子役に演じて貰っており、こちらがオリジナルであるという事が判る。

 

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 玲音はチューンを続けながらヴォイス・メールを聞いている。相手は若い大人の男性で、どこかの研究室に属している。プシュケー、そしてファントマの情報を玲音に伝える役割を担っており、在り様としてはゲーム版の牧野慎一郎というキャラクターと近しいのだが、シリーズでは寧ろ玲音を「誘導」する声の一つになった。

 更なる情報を求めて玲音はサイベリアへ――、行かずともワイヤード経由でJJに訊ねる。

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「ねえ、ガキんちょが遊んでるゲームの事知ってる?」
 問われたJJはレインがそこにいるかの様に
「PHANTOMaの事か? よしなよ、あんたみたいな大人がやるもんじゃ――」
 と振り向くのだが、レインはそこにいない。

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 合理的な解釈は必要ないのだが、JJのNAVI端末(画面には映っていないが当然あるだろう)に、生の声かと錯覚するVoIP音声が流れたのだろう。玲音のNAVIのパワーが高まっているが所以なのだが、まだ玲音が望む域には達していない。

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 シナリオ本注釈にも書いたが、「Phantoma」はフランスの無声時代の怪盗映画からの引用で、元々は「ありすin Cyberland」で使うつもりの名称だった。Doom型のダンジョンで亡霊と戦う――様なゲームを想定していた。
 当時はQuakeIIの時代で、ネット対戦ゲームとしてはもうちょっと進化している時代であったが、テレビアニメの(本来そんな予算枠のない)表現としてはDoom的なダンジョン表現となった。

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 本来ならプレイヤーはトリガー型のコントローラ端末で無双感を得る様なゲームなのに、そこで現れる亡霊はあまりにリアルな幼児達で、無邪気に襲いかかってくる。ゲームからログアウトしても、リアルワールドに幼児の亡霊が姿を見せる事で、プレイヤーは正気を失っていく――。

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 マンション屋上のシーツが多く棚引いている場面は、何とは特定出来ないが、実写映画からインスパイアされて書いた場面だった。
 後に中村隆太郎監督と組んだ劇場版「キノの旅 病気の国」で、ビデオ監視室の表現をCRTモニタが多く並んでいる絵面がつまらないと思い、大きな白布を多く吊り下げてプロジェクター上映している様に描いたのは、全く意識していなかったけれど「lain」のこの場面を思い出してシナリオに書いていたのかもしれない。

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 玲音はプレイヤーの混乱を鎮めたいのだが、自分自身がまだワイヤードで自由には動けず、プレイヤーには亡霊の一種に見られてしまう。

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 幼児の掌が壁を作る場面は、現代怪談のクリシェの一つ。
 ここで大写しになる幼児の口を開けるカットは、プレイヤーもだが視聴者をも戦慄させる。

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 プレイヤーは既にコントローラを壊しているのに、仮想のハンドガンで幼児に弾が切れるまで撃ち尽くす。

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 いや――、実際にはもっと酷い事をしたのかもしれない。

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 シーツに包まれた小さな躯が全く動かないままそこにあり、少年は放心している。

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 それを、玲音が哀しげに見つめるカットが印象的だ。
 この髪の棚引きがフルアニメーション。

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