教室ではありす達が質問責めに遭っていた。ありすは玲音に近づいて謝りたかったが、なかなか近づけずにいる。それを見て玲音は微笑み「大丈夫」と知らせる。
ありす、それを見て安堵。
と、画面内では前夜サイベリア事件の事を音声で流れていても、ヒロイン側には台詞無しで別のコンテキストを提示する、
という表現は実写的な生理で書いているが、寧ろアニメの方が明瞭に視聴者には伝わるのだなぁ、と思った。
授業中、玲音は集中出来ずノートにぐるぐる渦巻きを描いている。それがまるで何かを喚起させるかの様に――
聞いた話だけれど、今はテレビではこういう表現も封じられてきたという。テレビ以外の媒体が進んでいる現在、そうした制約は仕方ないと受け容れるしかないのかもしれないが。
無意識に描く渦巻きは、オルタード・ステイツ(意識変容状態)に導く。
四方田千砂が明確に台詞を喋るのはこの場面のみ。しかし、それが本当に四方田千砂かどうかは――。
そして渦巻きはある台詞を不明瞭ながら強迫的な反復をする。
「レインは誰――レインは誰――」
視聴環境によっては聴き取れないぐらいにくぐもらせたEQ(イコライジング処理)。
脳に器質的障害がない人であっても、精神状態が追い込まれる時には幻覚を得る。幻視であったり幻聴であったり。それをここでは極めてリアルに再現している。
下校時、ありす達は昨夜の体験が既にリアリティが無い事についてディスカッションしている。これは私個人の体験が元になっていた。
さてここで玲音の下駄箱に茶封筒が入っているという展開が起こる。
ありすが「それってラブレターとか?」と言い出すのだが、鴎華学園は女子校。
なのだが、まあギリギリ同性の生徒からのという解釈は(殆ど無理だが)不可能ではない。しかし後の話数で「男子がさー」という台詞を書いてしまっており、私が女子校設定を頻繁に忘れて書いてしまっていた事は隠せなかった。
中には何のドキュメントもなく、ただ何らかの集積回路が裸で入っていただけ(もう静電気どころの話ではないのだが……)。
シナリオでは、幻聴で既に聞いていた玲音は直ぐにそれが「プシュケー」という、謎めいたチップだと判るという描写をしていたが、中村隆太郎監督のコンテでは、すぐには判らず、帰宅して家に入る直前に、唐突に思い出して「プシュケー」と発語する――という描写になっている。
しかしそのチップをどうしたらいいのか玲音には判らない。
じっとワイヤードの「声」を聞いて康雄の帰宅を待つ玲音。
ここで仲井戸麗市さんによる「lainのテーマ」がフィーチュアされる。使用頻度は少ないものの、印象的に使われたと思う。
NAVIから「メールが届いた」という通知が来たが、それを開く前に康雄が入ってくる。
玲音はプシュケーについて訊ねる。「これ、何か知ってる?」
この時の2人の距離の遠さが印象的だ。
康雄は当然それが何か知っている。しかし、「知らない」と突き放す。
決して感情を露わにせず、仮面を瞬間的に被る大林さんの演技にひたすら感銘を受けていた。